東京実vs佼成学園
3安打の坂井将紀（東京実）
高校野球では珍しい4時間ゲーム。試合後、両チームの監督からは、疲労と反省の言葉が出た。春季大会の一つの目標である、夏の大会のシード校になるベスト16への進出が決まって、中1日で行われる4回戦。両チームとも、ベスト16の立役者である主戦投手は、できるだけ温存したいのが、本音だ。東京実の山下秀徳監督は、エースの栗田航暉に、「ひょっとしたら行くから」と告げて試合に臨んだ。
東京実の先発は背番号11の左腕・関根亮介。佼成学園は背番号1ながら、この大会では決してエース的な存在ではなかった桐生昂汰が先発した。
序盤は東京実が再三塁上を賑わすが、得点できない。4回表に単打3本を連ねて、ようやく1点を挙げる。
その裏佼成学園は、途中出場の6番・小寺龍之介の右中間を破る三塁打などで2点を挙げ、あっさり逆転する。
5回表から佼成学園はマウンドに背番号11の右腕・溝口真矢を送る。その溝口が、交代してすぐに2人連続で四球を出すと、この大会、主戦格で活躍していた左腕の中村 陸人をマウンドに送る。「2番手のピッチャーが誤算でした」と佼成学園の藤田直毅監督は語る。中村は投げるにしても最後の数イニングのつもりだった。5回からの投入は避けたいのが本音だ。
中村が登板すると、東京実は当たっていない4番の豊田琢磨にエースの栗田を代打に送る。栗田は中飛で、二塁走者は三塁に進み、続く藁谷大海の一ゴロで生還し、同点に追いつく。代打の栗田は、そのまま一塁の守備についた。
佼成学園は5回裏に4番・竹内優の左前安打など、安打3本を連ねて1点を勝ち越す。それに対して東京実は、7回表に代打・西岡航太の内野安打などで同点に追いつく。
8回裏からは一塁を守っていた東京実のエース・栗田がマウンドに上がる。まさに総力戦だ。しかしこの回は、佼成学園の5番・中島良太の二塁打に、途中出場の児玉隼哉の中前安打で勝ち越す。
桐生 昂汰（佼成学園）
粘る東京実は、9回表に、8番・平良大介の左前適時打など、安打3本で同点に追いつく。なおも二死一、二塁で打席に立った1番・高橋 智浩は左中間を破る二塁打。2人が生還すると思われたが、一塁走者は三塁を回ったところで、ベースコーチに止められる。ところが打者走者は三塁に向かおうとしたため挟まれ、その間に一塁走者が本塁を狙ったが挟まれてアウト。1点は勝ち越したものの、まだ何か起こりそうな展開だ。
案の定、9回裏佼成学園の先頭打者、3番・真田 和輝が三塁線の安打で出塁すると、犠打と盗塁で三塁に進み、5番・中島の右犠飛で生還。同点に追いつき、延長戦に突入。
佼成学園は延長11回に中村に代えて磯野俊をマウンドに送った。延長戦に入ると両チームともに得点はなく、延長13回はタイブレークになった。無死一、二塁の場面から始まるタイブレークで、両チームともに3番からの打順を選択した。
延長13回表東京実は、5番・藁谷の犠飛で1点。なおも続く二死一、二塁で、6番・坂井将紀は左中間を破る三塁打。中継の乱れもあり、打った坂井まで一気に本塁を突き、差を4点に広げた。その裏佼成学園は4番・竹内の二塁打などで2点を挙げたが及ばず、試合時間が4時間2分の試合は東京実が逃げ切った。
勝った東京実の山下監督は「選手は粘り強くやってくれました」と選手をねぎらう一方で、残塁18の展開に「反省点の多い試合です」とも語った。次の相手は帝京だ。東京実はかつて「帝京キラー」と呼ばれたこともあったが、そこまで考える状況でない。「みんなであきらめず戦っていくしかありません」と山下監督は語った。
敗れた佼成学園の藤田監督は、「勝たなければならない試合でした。夏は中村だけでは戦えないので、投手陣を整備しないと」と語った。粘り強く戦った熱戦であったのは確かだが、勝ち切れない、疲労感のある試合であったことも否めない試合だった。
（取材・写真＝大島 裕史）
