金正恩氏

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北朝鮮のエリート候補生が、金正恩党委員長に近づくのを嫌がっている。その背景には、些細なことで粛清・処刑する金正恩氏の恐怖政治がある。

米政府系のラジオ・フリー・アジアによると、金正恩氏の身辺警護を担当する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)護衛司令部の「親衛部隊」が人材難に陥っているという。

夜の奉仕も

この親衛部隊には誰もが入れるわけでない。思想や家系に問題のない選び抜かれた若者が送り込まれる超エリート部隊だ。対象者の選抜は、朝鮮労働党の組織指導部護衛総局、通称「5課」で行うため、対象者は「5課対象」と呼ばれることもある。

この5課は、「喜び組」を統括することで知られている。それゆえ、北朝鮮で「喜び組」は「5課処女」といわれる。(注=韓国・朝鮮語で「処女」は未婚女性や若い女性の総称)

彼女たちの基本的な役割は指導層に仕えること。様々な専門分野に別れており、最高指導者である金正恩氏や、指導層の面倒を見る。そして、特別な夜の奉仕を専門とする「木蘭組」という集団も存在するという。

(参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言…韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」

「5課処女」に選ばれた女性達は一生涯を指導層のために捧げなければならない。いわば体制の慰み者であり、女性に対する人権侵害の象徴ともいえる。そして、このシステムを作り上げたのが、金正恩氏の実父である金正日総書記。彼はこうした女性集団に特別な執着心を見せていた。

こうした事情から、親衛隊と5課処女は北朝鮮でも最高クラスの生活が保障されるが、親衛隊に関してはなぜか忌避する若者が増えているのだ。

正恩氏のトイレの秘密

その理由は「もし親衛部隊なんかに選ばれて、元帥様(金正恩氏)の警護を行い、些細なミスでも冒したら、自分はもちろんのこと、一族全員が殺されてしまうのはないか」という不安のせいだ。

親衛部隊は、金正恩氏の執務室、邸宅、別荘などの警護を行うだけあって、選抜基準が非常に厳しい。秘密保持も万全の体制を敷いているはずだが、それでも、この周辺から正恩氏の謎の私生活に関わるマル秘情報が漏れ伝わってくる。

例えば、金正恩氏は現地指導の際、一般のトイレを使用できない。そのため専用車のベンツに「代用品」を載せて移動しているという仰天情報も親衛隊の周辺が漏らしたものだ。

親衛部隊になるには、高等中学校を卒業した男性で、身長173センチ以上、正常な体重、一切の病気がないこと。そして本人はもちろん、6親等まで出身成分(身分)が優良であること――つまり思想的に問題がないことが条件だ。

こうした厳しい条件に志願者の減少も重なり、人員の確保が難しくなりつつあるのだ。情報筋によると、咸鏡北道での昨年の合格者はわずか18人。ところが、最終合格者はわずか2人しかいなかった。残りの16人は、中央の基準を満たさなかったからだ。地方幹部は中央から叱責を受けるはめになったという。

お隣の両江道(リャンガンド)では、さらに募集状況が芳しくない。現地の別の情報筋によると、この地域では7人を選抜するように中央から命じられたが、結局集めることができなかった。

入隊すれば、生活面では最高の待遇を受け、除隊後には幹部登用の優先権が与えられる。しかし、13年もの間、外部との連絡を一切断って金正恩氏に仕えることを求められる。

エリートコースではあっても、俗世間から隔離された暮らしが長くなり、幹部になっても今の北朝鮮の現実社会に適応できない。最近では、親衛部隊に選抜さた息子を持つ親は、息子の身体検査表を書き換えて持病があるように装い、わざと不合格にするという徹底ぶりだという。