大阪市営地下鉄の男性運転士2人が「ヒゲ」を剃ることを拒否したために人事評価を下げられたというニュースが報じられ、話題になっています。実はこの「ヒゲ」、これまでも時代によっていろいろな扱いを受けてきたようです。今回は、歴史に翻弄される「ヒゲ」の話をご紹介します。


今の時代は「ヒゲ」にとって、はたして生きやすい?



みなさんは「ヒゲ」という言葉を聞いて、すぐに漢字を思い浮かべることができますか?
ちょっと難しい漢字ですよね。
もし思い浮かんだとしても、1種類だけではないでしょうか。

実はヒゲは、漢字で書くと3種類もあります。
みなさんが思い浮かべるのは、おそらく口ヒゲ(髭)の漢字。
頬のヒゲ(髯)や顎ヒゲ(鬚)は、すべて違う漢字です。

ヒゲは長い歴史の中で、時代を反映してきました。
寛文元年、幕府は「大ヒゲ」(頬ならびに口の上下にヒゲを長く生やすこと)を禁止。
いかめしい顔つきではなく、儒学を利用した「文治政治」に転換していったのです。

長い時間が経ち、明治や大正に入ると、日本にやってくる欧米人の多くが立派なヒゲをたくわえていたため、八の字で両側がピンと跳ねている「カイゼルひげ」というものが流行しました。

昭和に入ると、ヒゲの立場がまたもや大きく変化します。
「昭和モダニズム」と呼ばれるブームが起こり、ファッションや遊びにこだわる「モダンボーイ」「モダンガール」が登場。
そして、このモガと呼ばれるモダンガールの嫌うものが「ヒゲ」だったのです。

「女性に嫌われるとあっては大変!」と、世の男性の顔からはどんどんとヒゲが消えていきました。
この時代に、「ヒゲを剃ると女性からモテるようになる」という内容の映画まで作られたのだそうです。
流行により、ヒゲはまた肩身の狭い思いをすることになりました。

政治的なもの、海外の影響、女性の影響……。
あらゆるものからの力を受け、禁止されたり、流行したりするヒゲ。
今の時代はヒゲにとって、はたして生きやすい時代なのでしょうか?

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「歴史に翻弄される、ヒゲ」として、3月16日に放送しました。

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