「有事に金正恩は飛んで逃げる」北朝鮮国民のクール過ぎる分析
核・弾道ミサイルを巡る国連安保理の制裁論議が大詰めを迎える中、金正恩氏が相次いで軍の現場を視察している。
朝鮮中央通信は21日、金正恩氏が空軍の訓練を視察したと報道。また27日には、同氏が新型対戦車ミサイルの試射を指導したと伝えている。ミサイル試射では、標的となった戦車が爆炎を噴き上げる写真とともに、正恩氏が豪快に笑う様子を紹介。同氏は、このミサイルの前では「敵は煮たカボチャに過ぎない」と語り、対立を深める米韓に余裕を見せつけた。
しかし実際のところ、今の正恩氏にそれほどの余裕があるのだろうか。米韓は、半ば公然と同氏に対する「斬首作戦」を推進し、心理的に圧迫。その試みは狙った通りの反応を引き出しているようにも見える。
そして、彼の心理について誰よりも冷徹な分析を行っているのは、どうやら北朝鮮国民であるようだ。北朝鮮の人々は体制により「洗脳されている」と見る向きもあるようだが、それは大きな間違いだ。残忍な暴力装置による抑圧には抵抗できなくとも、心の内には独特のブラック・ユーモアを維持しており、権力を揶揄したり風刺したりする思考の自由は失っていない。
そして今回もまた、正恩氏がその餌食になった。朝鮮半島有事が発生した場合、同氏がひとりで「飛んで逃げる」とする冗談じみたデマが拡散しているのだ。正恩氏の飛行機好きに引っ掛けたものではあるが、その一方で、彼が整備させてきた秘密施設も絡めた内容であるだけに、秘密警察が収拾に乗り出す事態にまで発展している。
こうしたに話が広がるのも、もはや金正恩体制が何をしようと、日米韓などの主要国と「良い形」で仲直りすることは不可能であり、また正恩氏にはそうした難題を乗り越える手腕がないことを、国民が見抜いているからだろう。
そして正恩氏自身もまた、国家指導者として信頼を得られていないと感じ取っているからこそ、国民の人権問題を無視しながら、恐怖政治を貫いているのかもしれない。
(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由)