筑波大駒場vs都立清瀬
すっかり夏の日差しが降り注ぐ、多摩市一本杉公園野球場での第2試合は筑波大駒場と都立清瀬の一戦。両校は昨秋ブロック大会で対戦しており、その時は9対0で都立清瀬が大勝している。リベンジを果たすべく挑んだ筑波大駒場。その戦いを彩ったのは、新しい風だった。
筑波大駒場が都立清瀬にぶつけてきたのは、壇 宏樹、伊賀 都温の1年生バッテリー。ピッチャー壇は172センチ58キロという細い身体でひょうひょうと、そして時に大胆に投げ込んでいく。それをリードする伊賀も安定感のある構えで冷静に、淡々と守りをこなす。下級生にありがちな「怖いもの知らず」というのとは、少し違う。顔つきこそ丸みのあるあどけなさが残るが、漂う風格と落ち着きは上級生のそれだ。
そんな落ち着き払った1年生バッテリーがピンチを迎えたのは、0対1と1点をリードされて迎えた4回表。先頭の吉岡 駿太を四球で歩かせると、続く6番・西村 泰雅にライトへツーベースを打たれ、無死二、三塁の場面を迎える。ここですかさず筑波大駒場ベンチはタイムを取る。背番号13のキャプテン・石橋 拓真が内野陣をマウンドに集め、明るく盛り立てる。キャプテンの明るい発破に勇気をもらったか、続く都立清瀬7番・田中 遵平をファーストフライに打ち取り、8番・柴田 蒼一朗のスクイズ気味に転がしたピッチャー前のゴロを壇が落ち着いて素早く拾い上げ、伊賀へトス。アウトに仕留める。このあと森川 岳にライトへタイムリーを打たれるものの、その1点で切り抜け、チームはますます盛り上がりお祭り騒ぎの様相を呈してきた。
一方の都立清瀬。2点をリードしているはずなのに、ベンチもスタンドもどこか浮かない顔。筑波大駒場ナインとスタンドが作り出す、一種独特な雰囲気に飲まれつつあった。
5回表、その都立清瀬の嫌な予感は的中する。お祭り騒ぎに目覚めた筑波大駒場打線が繋がりを見せる。先頭の3番・中本 圭がレフト戦ギリギリにヒットを飛ばすと、行友 崚も続き、さらに三浦 稜平は死球で出塁し満塁に。このチャンスで奥永 哲哉、仲井 達弥がタイムリーでつなぎ、まず同点に追いつく。一死取られるもののなおも満塁の場面で、壇が自らライトへ犠牲フライを放ち、遂に逆転。さらに1番・島田 祐太郎が2点タイムリーを放ち、この回5点を奪うことに成功する。
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5点を取ったその裏、都立清瀬の攻撃。じりじりと照る日差しとひかない湿度が筑波大駒場ファンに試合のもつれを予感させる。一死を取った後、都立清瀬2番・糸井 弘太郎が四球を選び出塁。3番・村田がヒットで続き一死一二塁。ここで壇は4番・阿曽 裕樹にセカンドゴロを打たせ、ゲッツーを狙うが、筑波大駒場1年生セカンド・仲井 達弥の送球が逸れ、オールセーフ。満塁のピンチとなる。続く吉岡 駿太の打球はまたもセカンドへ。球場が固唾をのんで見つめる中、仲井は完ぺきな送球でショート・中本圭へ。中本からファースト・三浦 稜平へと送られダブルプレーが成立し、この回をゼロに抑えることに成功。不安な気持ちを湿気ごと跳ね飛ばす。
このピンチを切り抜けたことで、完全に自分たちのペースを握った筑波大駒場。その裏に仲井のタイムリーで1点を追加し6対2とすると、都立清瀬のベンチや応援スタンドから悲鳴にも似た声援が響く中、チームを引っ張り続ける1年生バッテリーとセカンドを支えながら、後押ししながら、そして自分たちも攻守に好プレーを見せながら試合を進めていく。結局このまま試合の流れを引き渡すことなく、6対2で筑波大駒場が見事リベンジを果たした。
敗れた都立清瀬は、何が起きたのか?という表情を浮かべていたのが印象的だった。攻めていたはずがいつの間にか劣勢となり、相手を捉えられそうで捉えられずに勝利をつかめなかった。必死に声を出して自分たちを取り戻そうとしていたが、試合の大きな流れはどうにも止めようがなかった。リベンジを果たされ悔しい敗戦となった都立清瀬だが、6回から登板した1年生ピッチャー・清水 皓平は、勢いに乗る筑波大駒場打線を黙らせた。今度は、彼らが先輩たちの思いを受け継ぎ戦う番だ。勝った筑波大駒場の次の戦いは、7月12日、東京学芸大附との進学校対決となる。
(文=青木 有実子)
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