道路の地下に、宮殿が? そんなわけ、ないやろ〜! って突っ込みたくなりますよね。だって、そんなの聞いたことないですもん。宮殿って言ったらローマやギリシャにあるような、青空の下で映える高くて真っ白な石柱をついつい想像してしまいます。日本に存在するなんて聞いたことないですよね。突然宮殿の遺跡が見つかって発掘でも始まったんでしょうか?

 いえいえ、違うんです。その「宮殿」とは、埼玉は春日部市、国道16号の地下50mに登場した、その名も「首都圏外郭放水路」のこと。溢れそうになった中小河川の洪水を地下に取り込み、江戸川へ流すという洪水防止施設で、都市化が進んで地上に放水路を作るのが難しいことから設計されたんです。

 スペースシャトルがすっぽり入る大きさの、洪水を取り込む5本の巨大立坑をはじめ、地中深く6.3kmにわたって走る直径10mの地底トンネル、重量500トンの柱が59本もそびえるマンモス水槽、そして、最大で毎秒25mプール一杯分の水を排出するガスタービンを兼ね備えたこの施設、そのスケールといったらまさにギネス級です。

 「皆さん、この大きさにびっくりされて、見学会に10回も参加してくださる方もいらっしゃったんですよ。海外からの見学者の方も少なくありません」と話してくださったのは、放水路のナビゲーションをしている小倉さん。

 宮殿を思わせるマンモス水槽は、ウルトラマンコスモス、鉄人28号、仮面ライダー555などの戦闘シーンのロケに使われたそうです。「最近では、現在放送中のマジレンジャーの撮影も施設の操作室を使って行われたんですよ。見学会はロケがあっても中止にはしません。偶然見ることができたお子さんは、とても喜んでいましたよ」(同氏)

 子供たちに大人気のヒーローが敵と戦っているシーンを撮影しているその場所が、実はこの地域一帯に住む約330万人の生活を守っているなんて、素敵なことではありませんか?

 運がよければ、ロケとかち合うこともある見学会。今は大人気で、3月末まで予約でいっぱいのようです。中で写真を撮ったら、ローマやギリシャに行ったんじゃない!? って、ちょっとした自慢になるかも、です。(小川晶子/verb)

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