16日、東京都新宿区の早稲田大学で講演を行う藪本雅子さん。(撮影:東雲吾衣)

写真拡大

元日本テレビアナウンサーで、現在はハンセン病取材などを行っている藪本雅子さんの講演「女子アナ失格〜ハンセン病取材への道」が16日、東京都新宿区の早稲田大学(西早稲田キャンパス)で開かれた。同講演で藪本さんは、一世紀にわたるハンセン病問題に光を当てることなく放置し続けた「マスコミの罪」について言及した。会場にはボランティア活動に興味のある学生やジャーナリスト志望の学生がおとずれ、藪本さんの話に熱心に耳を傾けた。

 藪本さんは91年、日本テレビアナウンス部に入社し、いわゆる「バラエティーアナウンサー」の先駆けとして活躍した。その後、精神障害者や難病患者の取材を続けていく中で「ハンセン病問題」に出合い記者に転向、ハンセン病取材を始めることになる。

 藪本さんは、ハンセン病について「感染力はきわめて弱く、現在では発病することはほとんどない」と説明した。また、ハンセン病問題に取り組む団体「IDEA JAPAN(アイディアジャパン)」の森元美代治代表は「ハンセン病患者が収容されていた隔離施設は、想像を超えるほどひどいところだった」と、国によるハンセン病政策の「過去の実態」を語った。

 「ハンセン病問題は政府にも、医学界にも、司法にも責任がある。しかしそれらをチェックしなかったマスコミにも重大な罪がある」と語った藪本さん。現在でもマスコミは視聴率競争などを理由にハンセン病問題を取り上げなかったり、正しい知識や認識がないまま、イメージ先行の報道を行っていると批判した。

 藪本さんは、過去にマスコミが何の疑問を呈することもなく「ハンセン病患者」の隔離政策を報道していた事実を挙げ、「学生の皆さんには、つねに"正義"と言われているものを疑う視点を持っていてほしい」と話した。

 ハンセン病取材について記した藪本さんの著書「女子アナ失格」は、新潮社から出版されている。【了】

■関連リンク

女子アナ失格