現時点でのアギーレの一番の心配事は、この一件ではなく日本代表のことだと言う。彼自身にとって、UAE戦の敗北は予期せぬもので、失望そのものだった。選手も同じだろう。誰もこの段階で大会を去る早期敗退は考えていなかったはずだ。
「誰もが連覇の夢を持っていた」
 と彼は言う。
 
 アギーレは、日本代表のベスト8敗退は実力の反映ではないと考えている。UAEに対して、120分間を通じて決定的なチャンスを何度も何度も作ったからだと彼は言う。
「UAEを相手に同じような試合を100回やったら、99回は勝つだろう」
 よりによって1回の負けが、アジアカップの準々決勝になってしまったというわけだ。不運、ゴール前の決定力不足……。
 
 アジアカップに向けての準備は、しっかりとできていたと言う。あのPK戦に勝っていたら優勝していたかもしれない。アギーレはそうも語った。
 
 たしかに、日本は良いサッカーを見せた。内容を振り返れば、大会ナンバー1だったのではないだろうか。
 アジアカップでベスト8敗退という悲劇に見舞われたとはいえ、内容や采配という点ではポジティブだったはずだ。日本はたしかに躓いた。それでもすぐに立ち直ることができる。それだけのタレントは揃っているのだ。今大会ではそのことが十分に確認できた。
 
「目標はあくまでも2018年のロシア・ワールドカップだ」
 アギーレはそう言った。それまでに、日本サッカーのメンタリティを変えることが彼に課された使命である。日本サッカー協会は、ロシアW杯を見据えた長期プロジェクトをアギーレに託したのだ。
 
 アギーレは正しい仕事をしている。実を結ぶ時は必ず来るだろう。アジアカップでの戦いぶり、指揮官の采配から、日本の人々もそう感じているのではないか。
 
 日本はアギーレを信じるべきだ。
 
 告発の行方はおのずと明らかになる。現時点では、彼の立場を危うくする要素はひとつもない。そして客観的に見ても、日本代表の成長をたしかに感じることができる。
 
 アギーレは24時間日本のことを考えている。東京に住む彼の家族、妻のシルビアと息子のミケルも日本の文化の中にすでに溶け込んだそうだ。温かく迎え入れてくれた日本人に感謝しているという。
 
 アギーレはなにも心配していない。早くて2月、おそらく3月に発言の機会はやってくる。そこで自らが信じる無実を証明するだけだ。
 
文:ファン・カストロ(マルカ紙記者)
翻訳:豊福晋