総選挙後のニッポン 〜 2012年度の社会保障給付費は109兆円で過去最高を更新

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国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2012年度の社会保障給付費は108.6兆円(前年比1.1兆円)で、過去最高を更新したとのこと。このうち、「年金」は54.0兆円(50%)、「医療」は34.6兆円(32%)、「福祉その他」は19.9兆円(18%)で、国民1人当たりの社会保障給付費は85万円に上る。

「年金」、「医療」、「福祉その他」の推移をひとまとめにすると資料1の通りとなる。これと、資料2の「社会保障に係る費用の将来推計」と重ね合わせて考えると、やはり社会保障費の財源論が最大の課題であることがわかる。

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<資料1>

<資料2>

社会保障給付費は、今後当面は毎年度、“過去最高”を更新し続けることになる。大きな財源を確保する手段としては、次のようなことが考えられる。

(1)経済成長による税収増からの収入増
(2)増税による税収増からの収入増
(3)社会保障給付費の削減
(4)他の政策経費の削減
(5)国債発行による収入増

このうち、(1)は不確実なもの、(4)はこれ以上は困難、(5)は財政の観点から困難。だから、(2)と(3)を包括的に実施するということで、いわゆる『社会保障と税の一体改革』(一体改革)の法律が今あるわけだ。これが、今月21日に予定されている衆院解散・総選挙により、反故になる。

選挙結果を予想するに、総選挙後も安倍政権が継続すると見込まれる。そうなると、11月19日夜に安倍総理が解散宣言会見で語っていたように、消費増税の実施は2017年4月に先送りされることがほぼ確実。

しかし実際のところ、消費増税がいつ行われようとも、(3)は必至である。家の会計(家計)も、国の会計も、本当に大事なことは、支出に見合った収入の確保ではなく、収入に見合った支出の実施だ。だから、どのような政権の枠組になろうとも、社会保障費の削減からは逃れることはできない。自明のことだ。

解散後に始まる選挙戦では、「社会保障費の削減」を積極的に語る候補者は、一体改革を決めた自民党・公明党・民主党の中にいるだろうか。おそらく一人もいない。

選挙後には、「社会保障の削減」に賛同する当選者は、自・公・民の中にはかなり出てくるだろう。どの道、『増税+社会保障削減』しか道はない。我々に必要なのは、その覚悟である。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。