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9月の日本代表2連戦、グアテマラ戦とガーナ戦のメンバーに選出されたFW、柿谷曜一朗選手。東アジアカップとウルグアイ戦に引き続き、今回もスタメン出場が期待されています。


柿谷選手はテクニック、スピードがあり、シュートも素晴らしい精度を持っていますが、その中でも特に見るべきプレーは『ファーストタッチ』でしょう。本人もメディアの取材に対しては「自分はトラップが最大の武器」としばしば語っており、「ディフェンスが立つ位置によってもトラップは変わる。何気なく止めているようでも、必ずトラップには意図がある」と強いこだわりを持っているようです。



■スーパーゴールの影に潜んだ直前の動き



思い返せば、柿谷選手が世間から広く注目を浴びるきっかけになったのは、2007年に行われたU−17ワールドカップのフランス戦、センターサークル付近から相手GKの頭上を越える超ロングシュートでした。ひらめき、勇気、そしてキックの技術。そして、このゴールに至る過程には、ファーストタッチの重要性も隠れています。


柿谷選手は相手ゴール側に背を向けた状態で味方のクリアボールを拾うとき、右足を引いてボールの勢いを殺しながら、ファーストタッチで素早く前へターンしています。しかもこのとき、自陣方向へグッと踏み込むフェイクを入れることで「ポストプレーか?」と相手に思わせ、自分に対するマークも外しました。このファーストタッチで余裕を作ったことで、スーパーゴールは生まれたと言えるでしょう。


重要なのは『次のプレーにつながるトラップ』、すなわちファーストタッチをする、という意識を強く持つことです。


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■“トラップ”という単体の動きで終わらせない



柿谷選手のトラップには、必ず「ながら」という言葉が付きます。トラップし「ながら」走る、トラップし「ながら」ターンする、トラップし「ながら」方向を変える、トラップし「ながら」シュートの踏み込み体制を作る……。そのプレーを見ると、トラップを止めてから次のボールタッチをするまでの動きが、一連の流れになっていることがよくわかります。これが平凡な選手の場合、トラップしたときに足がピタッと止まり、次の動きに入る前に相手のプレッシャーを受けてしまうのです。


2013年5月のJ1月間ベストゴールに選ばれた、名古屋戦のゴールも素晴らしいファーストタッチが隠れていました。センターバックの背後から飛び出した柿谷選手は、左サイド側からのスピードの速いパスを、左足のアウトサイドで受け、そのままシュートを決めました。このとき、左足で普通にトラップすると左足側にボールが置かれることが多いのですが、柿谷選手はあえてボールを右足側へ流すことで、相手センターバックから遠く、なおかつ自分の利き足でシュートを打てる場所にボールを置きました。まさに完璧なファーストタッチ、テクニックと状況判断がミックスされた素晴らしいゴールでした。


百聞は一見にしかず。柿谷選手がトラップし「ながら」何を成功させているのか。自らの目で確認してみてください。


明日は柿谷選手のドリブルに迫ります(9月5日更新予定)。





清水英斗(しみず・ひでと)//

フリーのサッカークリエイター。ドイツやオランダ、スペインなどでの取材活動豊富でライターのほか、ラジオパーソナリティー、サッカー指導、イベントプロデュース・運営も手がける。プレーヤー目線で試合を切り取ることを得意とし、著書は、『あなたのサッカー「観戦力」がグンと高まる本』『イタリアに学ぶ ストライカー練習メニュー100 』『サッカー観戦力が高まる〜試合が100倍面白くなる100の視点』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』『サイドアタッカー』 『セットプレー戦術120』など多数。

●twitterID:@kaizokuhide




文/清水英斗 写真/新井賢一(東アジアカップ2013決勝大会より)