この時の火山灰は上空1万6,000kmに達し、ほとんどの航空路の高度と重なる。

影響は1週間〜1カ月以上続き、どのようなルートを飛行してもヨーロッパの空港を発着する便は火山灰を避けられず、安全のためには「欠航」以外の方策はなかった。

前記のブリティッシュ・エアウェイズ以外にも、火山灰を吸い込み、エンジンが不調になった事例は過去に存在する。

航空機メーカーでは可能な限りエンジンの信頼性を高めているが、空気を取り込んで燃焼させるというジェットエンジンの基本構造は変えられなく、技術面での対策は難しい。

大規模な欠航を余儀なくされると、観光、物流など、経済への影響が深刻だ。

しかし、「安全」が優先であることは言うまでもない。

現代はグローバルな気象観測ネットワークが構築されており、火山情報および火山灰の飛散区域を把握するシステムがある。

パイロットはフライト前に、航空路にそうした危険な区域がないかどうかを常に調査し、飛行計画を立てている。

また、パイロットが航空路の状況を報告し、次に同じ範囲を飛行する便に対して情報提供する仕組みもある。

安全対策としては、噴煙が広がっている危険な区域を避けて飛行ルートを設定するか、それが無理なら「飛ばない」選択肢を講じるしかない。

立ちはだかる大自然の壁には、どんなハイテク旅客機であっても、「早期に逃げる」という手段しかないのだ。