ひと昔前なら、あるCMに出ているタレントが契約満了になった後、仁義を貫くためにライバルメーカーのCMには出ることはなかった。
 だが、最近のCM業界は違うようだ。06年から08年にかけて日産のスカイラインV36のCMに出ていた渡辺謙が、今度はスズキに出演、なにかと憶測を招いている。

 渡辺が契約したのは、9月6日に発売されるスズキの発電エコカー新型ワゴンRスティングレー。「日本が待っていたエコカー誕生 リッター28キロ走る」というのが売りである。
 「スズキは昔から小型車が得意だが、今度出すのはワゴン車。それもエコ系で、社運をかけている。だが、渡辺のCMはひと足先の8月なかばからスポットCMが流れているが、それほど話題になっていない。車もベールを脱いでおらず渡辺がしゃべるだけなので“ながら視聴”でテレビを見ている人たちには何のCMかわからないとの声が強い」(車専門誌ライター)

 渡辺は全盛期にスカイラインV36のCMにイチローと出ており、推定ギャラ8000万円といわれた。
 だが、今回は日産よりもひと回り小さい企業のスズキである。渡辺はなぜ仁義を無視し、スズキのCMにとびついたのか。
 たしかに仕事ではかつての勢いはない。焦りがあったとの見方もある。
 9月からNHKドラマ『吉田茂』に主演するが、映画『バットマンビギンズ』(05年)、『沈まぬ太陽』(09年)といった大作がないのだ。
 スズキはギャラの額決定ではなかなか厳しい会社なので、推定5000万円程度とみられている。

 “渡辺株”下落の原因はなにか。
 「東映『はやぶさ 遥かなる帰還』が興収7億円台と大コケしたのが原因です。製作費・宣伝費で10億円を越えているから映画レベルでは大赤字。以降、映画界は渡辺と距離をとり始めています」(映画業界関係者)

 スズキも、渡辺のCMギャラがお手頃価格に落ち着いたため起用したに違いない。この選択、果たして吉と出るか、凶と出るか。