久々の投稿になってしまい、すっかりご無沙汰なのだけど。宇都宮徹壱さんが、有料メルマガ『徹マガ』を発行された。

http://tetsumaga.sub.jp/tetsumaga_official/

オフィシャルのtwitterアカウントもあり、そこによると、「1年契約が半数以上」だという。つまり「宇都宮徹壱さんなら、8,000円を払ってもいい」と考える人がかなりの数いるということだ。メディア不況といわれる中で、年会費(つまり定期購読)8,000円を受け取れる雑誌はそう多くないはず。宇都宮さんは、少なくともブランド力で雑誌に比肩するものがあるということだと思う。

そして有料個人メディアは、サッカーメディア界にとっては新鮮でも、他の業界ではそうでもない。日垣隆さん、佐々木俊尚さん、上杉隆さん、堀江貴文さんほか、多くのライターや作家が有料メルマガを始めており、大成功を収めて巨額の収入を挙げている方も少なからずいる。

宇都宮さんにとって、この試みがどういう結果に終わるのか、それは分からない。しかし金銭的な成功はあくまで副産物にすぎない。何の? 僕は「信頼」の副産物だと思う。

有料メルマガを始める方の共通項は、「自由な言論の場を確保する」こと。自分でメディアを持ち、生活基盤を作り、「ここと切れたら終わり」ではなく「どことでも仕事ができる」状態にする。そうすることで、ライターには真の意味での自由が手に入る。成功すればお金も入るけど、それは「信頼関係」が産んだ副産物に過ぎない。

雑誌に記事を書くということは、ある意味で雑誌にリスクを按分してもらっているということでもある。ゆえに、リスキーな記事を掲載する場合は、その発言の担保を雑誌編集部と分かち合う。

しかし近年は紙媒体の不況に加え、名誉毀損裁判の高額化という側面もある。オリコン烏賀陽訴訟など、ライター個人に向けた巨額の賠償金訴訟なども起こった。

そうでなくとも雑誌が売れず、スクープを出しても部数が伸びないという状況で、ノンフィクションというジャンルは衰退化していると聞く。つまり、どんな危険を冒して戦場に向かい、決定的瞬間をファインダーに収めたとしても、買ってくれるメディアが減りつつある。現在アフガンに向かって拘束されたままの常岡浩介氏など、ほんの僅かなライターしか現場に向かわないのは、決して気概だけの問題でもないのだろうと思う。

ライターが有料個人メディアを持つことは、ノンフィクションの復活にダイレクトにつながりうる。そういう意味で、「股旅」と称して世界の僻地を飛び回る宇都宮さんにとって、有料個人メディアの開設はうってつけであるはず。そして、この試みが成功すれば、多くのサッカーライターが個人メディアを持ち、業界は再び再活性化するに違いない。

また、日垣隆氏がやっているように、メルマガでまとめた原稿を(一部ないし大幅に手直し、加筆して)書籍化するというケースもある。そうした書籍が売れないかというとそんなこともなく、つまり有料メルマガは書籍を助けもする。その好影響が、あらゆる紙媒体に還流する可能性は大いにあるだろう。

この試みが大成功を収めることを、心より祈念している。

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