写真/中島望(3日目は健闘したものの予選落ちとなった石川遼)

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コースに試されている――そんな印象を受ける石川遼の闘いだった。AT&Tぺブルビーチ・ナショナル・プロアマは石川にとって米ツアー挑戦7戦目(除く:全英オープン、プレジデンツカップ)だった。「7戦目」と聞くと、そろそろ慣れてもいいだろうと思えるかもしれないが、広大な米国土で開催され、さまざまな条件やシステムが異なるのが米ツアーの大会だ。実際、米ツアーのルーキーたちは米国人選手であっても「最初の1年間は慣れないことばかりで大変だった」とこぼすぐらいなのだから、外国人で18歳の石川がたった7試合でこの舞台に慣れるわけがない。しかも、この大会は本戦がプロアマ形式で3コースを使用するという変則だったわけだから、石川が惨憺たる成績で予選落ちしたことは、言うなれば当然に近い結果ではあった。

ただ、どんな結果であろうとも、収穫があれば前進はできる。今回の石川の最大の収穫は、これまで経験したことのないような様々な状況に遭遇し、いろんなショットやパットや攻め方を求められた中で、必死に考え、試すことができたという点だ。新しい試みは必ずしも成功したわけではなく、むしろ失敗のほうが多かった。たとえば、深いラフから低い弾道で出そうとしたら、「2回チャレンジして2回とも芝の抵抗に負けてしまった」なんて失敗もあった。スタイミーの大木の左を抜いてスライスをかけようとしたけれど「フェースを開き過ぎた。ライが前下がりだという計算ができていなかった」がゆえに木に当たってしまったこともあった。グリーンも見た目よりさらにデコボコで、思わぬ転がりをしたり、転がらなかったり。「練習ラウンドではアンダーパーで回れるのかなと思った」にも関わらず、実際はアンダーが出せず、それなのにリーダーボードには2ケタアンダーの選手たちが名を連ねる。「カルチャーショックというか、あらためて世界が見えたというか……」。それほど、石川が思い描いていたものと現実との間には大きな差があったわけだ。

しかし、その差に早々に気付くところが石川の才能であろう。コースに試され、失敗し、落胆したりショックを受けたりしている中で、何が日米の差なのか、何が自分に不足なのかということを冷静に感じ取れる。そして彼は、必ず感じ取った自分の「不足」を満たすことを考え、実行する。昨年もそうやって前進したからこそ、あのプレジデンツカップでも大活躍ができ、日本の賞金王にも輝くことができたのだろう。

難しいセッティングのコースに試されているということは、言い換えれば、いつか太刀打ちできる可能性があるということだ。まったく太刀打ちできない選手なら、おそらくは進行ペースの遅さやグリーンのデコボコぶりに不平不満をぶちまけて終わりになるはず。コテンパンにやられればやられるほど、「いつか負かしてやるぞ」という気になれる。そんな石川にとって、この予選落ちには深い意義があった。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)