東京ヴェルディの株が、日本テレビから東京ヴェルディホールディングスに譲渡されることが正式に決まった。景気悪化により親会社が手放したものを、ヴェルディのOB主体の新会社が支えていこうというものだ。

これは当然、ヴェルディだけの問題ではない。Jリーグ全体の問題として考えなければいけないことだね。Jリーグが始まって17年の歴史の中で、フリューゲルスもベルマーレも同じような目に遭っている。それがヴェルディにも訪れたという話で、今回が最後というわけでもない。

景気が悪くなると親会社の経営が悪化し、スポーツチームにしわ寄せがくる。このコラムでも再三述べてきているように、親会社ありきのアマチュア体質がこのような問題を生むのだけど、Jリーグが地域密着のクラブスポーツという当初の理念を貫けなかった、その証明だろう。

ではなぜ野球チームは撤退されないのか、という見方もある。その答えのヒントに、Jリーグを立ち上げる際、川淵チェアマンと読売がぶつかった出来事がある。当時地域密着の理念を掲げたJリーグは、チーム名に企業名を入れず、あまりにリーグ主体の経営をするということで、読売から反発を買った。
リーグ主体の経営というのは、つまり一度本部にお金を集めて、それを各チームに分配するというやり方だ。グッズ収入も、放映権料も、一度Jリーグ本部の懐に入るようになっている。これが野球や、海外のリーグと大きく違うところだ。

景気悪化で親会社にもお金がない昨今、Jリーグのこの体質はチーム経営をよりひっぱくさせている。チームは赤字なのに、あくまで運営組織であるはずのJリーグ本部が黒字なのだから、ふざけた話だよ。もっとチームに権利を与えて、自由競争をさせていかないと、つまり本当の意味でのプロ体質にならないと、サッカー界の未来は暗いと言わざるをえないね。

今のままではすごく心配だよ。第二、第三のヴェルディがこれからもっと出てくるかもしれない。マリノスなどは、かなりその可能性が高いと思うね。スタジアムのネーミングライツ契約を終了させたり、中村俊輔を引っ張ってこられなかったり、親会社の経営悪化の影響がもろに出ている。
ヨミウリと日産、どちらもかつての名門チームだよ。Jリーグの進んでいる道が正しくないということの象徴じゃないかな。Jリーグには一刻も早く体質改善をしてもらわないと。自分で自分の首を絞めていることになぜ気がつかないのだろうね。(了)


セルジオ越後 (サッカー解説者) 

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中