【サムライ通信】本田圭佑が南アフリカで輝くための条件
「俺はリスクを負って前に行くタイプ。オレは1対1を仕掛けることを日々やっているけど、明日はその一日で変わりはない。自分のよさをチームの勝利のために出すだけ」
試合前日も自信たっぷりにそうそう語っていた本田だったが、岡田監督はオランダ戦の先発に本田を起用しなかった。その決断は理解できる。監督就任後初めて、世界のトップ10以上のチームとの対戦。ワールドカップへ向けた最初の一歩で確認すべきは、「日本サッカーがいかに戦えるか」ということだったはずだ。現代表は攻守にわたり“連動性”“組織力”が生命線となるチーム。チーム構成を変更して挑んでは、わかるものもわからなくなる。本田というカードは魅力的なカードだが、それを先発で起用する試合ではなかったということなのだろう。
「テストしたかった」という岡田監督の意向のもと、後半から投入された本田は、最初は左サイドでプレーし、69分の1失点後、中村憲と興梠が交代するとトップ下でプレーすることになる。
この時間帯、日本の足は止まっていた。スピードアップしたオランダの攻撃、疲労のため、前半は高い集中力と緊張感のもと成立していたプレスが、効かなくなる。加えて「新しい選手が入って、全員が意識して連動できなくなった」と中村俊が語るような状況にも陥り、失点を重ねてしまった。
「本田の起用で日本が崩壊した」というような報道もあるが、3−0の理由はそれだけではないだろう。「向こうはトップクラス。パワーもあり、個人技術も高い。そのうえで組織としても戦える。でも、個人で劣る俺らはそれ以上の組織力でゴールまで行かなくちゃいけない」と中村俊輔。
オランダという国を相手に、日本代表の現時点での限界というものが露呈した試合だった。日本のプレスが利いていた前半、オランダは自陣でボールを廻し続け、攻撃チャンスはあまりなかった。チャンスを作れなかったのか、意図的に作ろうとしなかったのかはわからない。逆にそういう時間帯に有効な攻撃をする余裕が日本代表になかったことも事実だ。
チームとして見えた課題、掴めた手ごたえ、選手個々が抱いた思いをどう進化のきっかけにするか?敗戦の意味はこれからの彼らの姿が作っていくだろう。
絶好のアピールの場だという思いを強く試合に挑んだものの見せ場すら与えられなかった本田の姿に、07年秋のスイス戦の松井大輔のことを思った。新しい代表で存在価値を見せたいと心に秘めてピッチに立った松井は、「とにかく一発を狙いたかった」と何度も何度も裏への飛び出しを見せ、自身の武器であるドリブルでの勝負に拘った。そして、得点となるファウルを得ることに成功する。