誰もが知っている名作漫画「ドラゴンボール」。いろいろな意味で話題を呼んでいる実写映画の公開が近づいており、逆説的に原作への郷愁が高まっているファンも多いだろう。アニメ「ドラゴンボールZ」の再放送「カイ(改)」の準備も進んでいるようで、世の漫画好きは当分DB熱に浮かされそうだ。

 主人公「孫悟空」をはじめとして魅力的なキャラクターの宝庫であるこの作品だが、人気ナンバーワンはなんといっても「ベジータ」であると断言する。これに異を唱える読者はそうはいるまい。

 ベジータははじめ悟空の敵として現れた。初登場は自らが殺したと思われる異星人の体に乗り、その腕を食うという悪の権化のような構図。味方をもあっさりと切り捨てる冷酷な性格と粗暴な言動、そして絶対的な強さは少年漫画における王道の悪者であった。

 そんなキャラクターがなぜこれほどまでに読者の心をつかんだのか。それはもう単純に、格好いいからに決まっている。

 ベジータは悟空との直接対決の後、「フリーザ」を共通の敵とすることで一時的に手を組んだ。そして殺される直前、涙を見せて同胞であるサイヤ人を殺したフリーザへの憎しみを吐露し、“いちばん気にいらない”悟空に望みを託す。この場面でベジータの高慢な態度は民族に対する誇りと愛からきていることを読者は知らされるのだ。

 ドラゴンボールの力で生き返ったベジータは微妙な変化を見せ始めた。これは少年漫画にありがちな戦い→仲間という即物的で単純なものではない。ベジータは戦闘のエリートであり、一惑星の王子であるゆえ、心を開く術を知らないのだ。相変わらず強さのみを求めて不要と判断したものには見向きもしないが、修行や戦いを経て少しずつ、少しずつ、本当に少しずつ悟空らと絆を深めていく。

 愚直なまでに己の信念に殉ずる男、これが格好よくないわけがない。加えてベジータは下級戦士でありながら圧倒的な強さを誇る悟空に対して劣等感を抱いており、それがまた一層キャラクターに深みを与えているのだ。努力と栄光と挫折の輪廻から抜け出せないその姿は男性の心を打ち、女性の心を刺激する。あんなにがんばっているのに常に2番手なんて、もう、たまらないではないか。

 そんな女性ファンの気持ちを代弁しているのがベジータの妻となった「ブルマ」。『プライドがたかくてハッキリとしたやさしさをみせる人じゃなかったけどわたしにはわかるの……』、この言葉に賛同する女性は多いはずだ。男性には理解しがたいかもしれないが、寂しそうな様子を見て“ついなんとなく”というのもわかりすぎるほどわかる。挫折から努力へ移行するほんの一瞬に2人の心はつながったのであろう。

 たとえ自分を顧みることがなくても、ストイックに生きる男に弱い女は多い。できる女は男がほんの時たまふり返ってくれるだけですべてを許すことができるし、それでいて無駄に男を待つことはしない。常に奔放にすごして男がふり返る瞬間を先読みし、笑顔を用意するだけでいいのだから。だけ、といってもこれはなかなか骨が折れる。見事に実践してベジータの心をつかんだブルマにあやかりたいものだ。

 連載時はすでに大人で興味がなかったという女性諸君、ぜひ今こそドラゴンボールを読んでみてほしい。少年漫画史上一、二を争うダークヒーローに貴女の心はきっとときめくであろう。


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