日経の「報道漏れ」を揶揄する声も

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    生損保の不払い問題が収まる気配を見せない。生命保険全38社が2007年4月中旬に金融庁へ報告した不払いは総額359億円、件数44万件にのぼり、なお200万件近くが不払いの恐れがあるとして調査中と、底なしの様相を見せている。一連の「不払い」を伝える報道の中で、「異彩」を放ったのが経済専門紙の誉れ高い日本経済新聞だ。業界からも「贔屓の引き倒しだ」との声が上がっている。

   生保全社が不払いを報告した4月14日の朝刊、テレビ報道を見比べた人は奇異に思っただろう。日経を除く新聞社、テレビなどは不払い件数が25万件と報じていたのに、日経の1面では12万件だったからだ。日経の不払いが他社報道の半分以下だった理由は、保険を解約した時に発生する解約返戻金などが支払われていないものを「不払い」と数えず、「支払い漏れ」として計上したためだ。
   ところが、金融庁が全社の不払い件数を自民党に報告したことを伝える4月19日夕刊で、「不払いが合計44万件あった」と表記。不払い件数が5日前の朝刊の4倍近くに膨らんだ説明はなかった。
   「不払い」と「支払い漏れ」の違いは、生損保業界がこの2年間、こだわってきた点だ。故意に支払わなかったと受け取れる「不払い」を嫌い、発表文などでは「支払い漏れ」を多用。中には報道各社にも使用を働きかけるケースもあった。しかし、報道各社の多くはほどなく「不払い」と表現。「支払い漏れ」を使い続けたのが日経だった。

   損保大手6社で約26万件の不払いが発覚した06年9月末、日経は「損保支払い漏れ26万件」と報道した。しかし、同10月下旬に、損保大手5社で医療保険などの「第3分野」でも不払いが発覚すると、「不適切な不払い」と表現を修正する。
   その後、日経と金融専門紙の日経金融新聞では「不払い」と「支払い漏れ」が入り交じる混迷期を迎える。それでも、なぜか07年4月8日朝刊ではなお「支払い漏れ」の表記が生き残る始末だった。
   一連の日経報道に対し、業界からも「契約者から見れば、支払い漏れは不払いそのもの」(大手生保)と、日経の「報道漏れ」を揶揄する声が漏れる。一般の契約者よりも生損保業界を擁護する姿勢の現れ、との批判が出てきてもおかしくない。