従来よりも軽くて高剛性なのが最大のメリット

 新車の解説記事に最近よく出てくるのが、ハイテンション鋼とか高張力鋼板という言葉。どちらも同じなのだが、一体なんなのだろうか? 最近増えている理由も含めて解説しよう。

 言葉的にはハイテンション鋼と高張力鋼板は同じ。英語と日本語というだけだ。これは字を見てもわかるように、張りが強くて強度のある鉄板のこと。たとえば、紙が従来の鋼板とすると、下敷きのようにパンと張ったのが高張力鋼板となる。

 最大のメリットとしては薄くても張りがあるので、従来よりも板厚を薄くできるというのがある。つまり、薄くても今までどおりかそれ以上の剛性を確保できるわけで、これは軽量化につながるし、さらに言えば燃費にも効果を発揮する。だから、今のクルマには欠かせない材料であり、だから新車のニュースリリースでもひとつの特徴として触れられるわけだ。

ぶつけたときに修理費が大きく嵩むのがデメリットか

 またひと口にハイテンション鋼板と言っても、590MPaや1500MPaなど、その強度によって違いがある。素人目には高いほう(数字が大きいほう)がいいのではと思ってしまうが、高強度ゆえ、衝突時の変形という点では遜色が出てしまう。つまり適材適所で、従来の鋼板との使い分けが必要となる。

 さらにデメリットもあって、張りが強いゆえに裂けやすかったり、プレスで形が作りにくいなどがある。そもそも価格が高いのも大きなデメリットで、新車の紹介では全体の何ナンパーセントで使用というのは、これが大きな理由だ。つまり高いけど、これだけ頑張って使いましたということなのだが、いずれにしても車両価格には跳ね返るわけで、最近のクルマが高いと言われる理由のひとつとなっている。

 そして、われわれユーザーにとって大きなデリットがある。それがぶつけたとき。簡単に言ってしまえば、板金がとても難しいし、溶接機も専用のものが必要。さらにパテも高張力鋼板用を使わないといけないので、パネルごとの取り替えが基本になっているなど、修理費用は高くなるばかり。いい素材なのはわかるが、これは痛いところだ。