UberのソフトウェアエンジニアであるPhillip Wang氏は、サイトをF5キーなどを押して更新するだけで次々に新しい「この世に存在しない」人物の顔を生成する、「This person does not exist」というウェブサイトを作成して公開しました。

This person does not exist

https://thispersondoesnotexist.com/

This Person Does Not Exist Is the Best One-Off Website of 2019 | Inverse

https://www.inverse.com/article/53280-this-person-does-not-exist-gans-website

「This person does not exist」の公式ページにアクセスすると、世界のどこかにいても全くおかしくない女性の顔が表示されました。F5キーを押すなどしてページを更新すると……



今度はかわいらしい子どもの顔が表示されました。



優しく笑うアジア系の女性に……



笑顔を浮かべた白髪の白人男性。



二重の青年など、ページを更新するたびに新たな人物の画像が表示されます。



まるで企業の役員紹介ページなどにのっていそうな顔写真にも思えますが、実はこれらの画像は全て機械学習アルゴリズムが生成した、この世には存在しない架空の人物の画像。



一見すると本物の顔写真と見分けがつきませんが、時には画像の隅に妙な光が浮かんでいたり……



耳の後ろにおかしなゆがみが発生するなど、やや詰めの甘い画像も生成されました。



This person does not existを作成したPhillip Wang氏は、人工知能アルゴリズムの一種である敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いて、これらの顔写真を生成しています。GANは出力すべきものが決まっていない「教師なし学習」において使用される人工知能アルゴリズムで、互いに競合する2つのニューラルネットワークシステムを用い、学習精度を向上させていくというもの。

もともと、機械学習ではコンピューターに質問と回答を同時に教える方法が一般的でした。たとえば犬の画像を読み込ませたコンピューターに「犬の特徴」を分析させ、発見した特徴をもとに「犬の画像」を識別できるように訓練するという仕組みです。

これに対してGANでは、「Generator(生成者)」と「Discriminator(鑑別者)」という2つのネットワークシステムを使います。たとえば本物に近い画像の生成が目的であれば、Generatorは本物と同じような画像を次々と生成し、Discriminatorはその画像が本物か偽物かを見破ります。Generatorは自身が生成した画像がDiscriminatorに見破られないように生成精度を高めていき、反対にDiscriminatorはGeneratorが生成した画像を見破れるように鑑定精度を高めていき、お互いに学習を行う仕組みになっているとのこと。これを続けると、やがてGeneratorが生成する画像は本物との見分けが付かないレベルにまで成長します。

そんなGANの新たな仕組みとして、アメリカの半導体メーカーであるNVIDIAの研究チームは、Generatorのアーキテクチャに改善を加えることで画像合成の過程をコントロール可能にする「StyleGAN」というコードを作成しました。Wang氏はこのStyleGANをもとにして、This person does not existを作成したとのこと。サイトを作成・公開した目的について、Wang氏は「私は自腹を切ってこの技術に対する一般の認識を高めたいと思ったのです」と述べています。