急に冷え込んできて、朝起きたら喉が痛〜い。なんてことになっていませんか?熱はないけど喉がイガイガする、つばをゴックンすると痛い。そんなとき、ほしくなるのがのど飴。CMでも有名な「ヴィックスドロップ」などのドラッグストアで販売されているのど飴は、本当に喉にいいのでしょうか? 

のど飴に求められるのは「溶けにくさ」

「熱はないけど喉が痛い」人がSuits-woman.jp読者にも多いと聞いています。喉が痛むのはかぜ症状のひとつ。熱はなくてもしっかりケアする必要があります。熱が出ないと休まない(休めない?)のが日本人。そのため、ゆるいかぜ症状がいつまでも喉に残ってしまうのではないでしょうか?

さて、今回は「ヴィックスドロップ」についてのお問い合わせですね(正式名は「ヴィックス メディケイテッド ドロップ」)。この製品は「指定医薬部外品」ですが、これは医薬品ではないが、症状に有効な成分が入っているというもの。

有効成分はセチルピリジニウム塩化物水和物で、殺菌作用があります。CPCと表記されることもあり、のど飴やトローチのほか、歯磨き粉やかぜ薬にも使用されています。

喉の痛みに飴が有効なのは確かです。喉が乾燥してヒリヒリ、ガラガラ。かぜウイルスは乾燥した所が好きですから、乾燥した喉にも入りやすい。飴をなめていれば唾液が出て潤い、乾燥を防ぐことができますから。

ここで大切なことは、喉を唾液で潤すことです。その際、飴に殺菌作用のある成分が入っているかどうかは、あまり関係ありません。口内に唾液で出ればいいのですから。

その意味では、わざわざ「のど飴」である必要はありません。のどの痛みの軽減を主旨とするなら、「なかなか溶けず、長い時間なめられる飴」がもっとも有効なのではないでしょうか。

とはいえ市販の「のど飴」が不要だと言うわけではありません。ヴィックスをはじめ、のど飴、トローチは溶けにくい材でできていますし、メントールなどのスーッとする成分が入っています。メントールに薬効はありませんが、スーッとすると気持ちがいいですよね。

ちなみにメントールなどスーッとする成分が入っているのは市販薬ならでは。処方薬では薬効のない成分は認められないので、メントールは入っていないのです。

喉スプレーはポピドンヨードよりアズレン

喉の痛みを軽減するには「喉スプレー」も有効です。ドラッグストアには、「イソジン」などポピドンヨードのスプレーと、「アズレン」などアズレンスルホン酸のスプレーがあります。

ポピドンヨードは強い殺菌力を持った消毒薬です。アズレンスルホン酸は炎症を抑える作用がある抗炎症薬です。

ポピドンヨードはバイ菌だけではなく、ふだん口内にいる常在菌も殺菌してしまいます。口内にかぎったことではありませんが、人体には腸内にも皮膚上にも、たくさんの常在菌が存在しており、それらがバランスを取ることで健康を保っています。常在菌の中には外部から入ってくるバイ菌をやっつける菌もあり、強い殺菌力をもつポピドンヨードはこれもまとめて殺菌してしまうことになります。口内を消毒してしまうのは、喉の痛みにとってもいいことではないでしょう。

その点、アズレンスルホン酸は、喉の痛みの元である炎症を抑える作用があり、こちらのほうが有効だと思います。

ポビドンヨード、アズレンスルホン酸、いずれもうがい用の液薬も市販されています。ただ、どの液を使ってもウイルスを殺菌する力はありません。うがいは喉を清潔に、爽やかにしてくれますが、効果はそこまで。それを考えると、うがいには水でも緑茶でもいいと私は思います。

喉の痛みに有効なのは唾液による潤いです。



■賢人のまとめ
喉の痛みを緩和するのに飴をなめて唾液を分泌し、喉を潤すことは有効です。喉用スプレーやうがい薬については、殺菌効果のあるものより抗炎症作用のあるアズレンスルホン酸のほうがおすすめです。

■プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングをマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。