消費税のさらなる増税は不可避の中、二重課税と思われる疑問を解説します(写真:よっしー / PIXTA)

1989年に税率3%ではじまった消費税。その後、5%、8%となり、10%にする時期を巡って政治的な駆け引きが続いている。また、少子高齢化が進む日本では将来の消費税率のさらなる引き上げは不可避との意見も多い。

消費税以外にも国民はいろいろな税金を支払っているが、モノを購入するときに負担する税金で重税感がたびたび指摘されるのは、ガソリン税、酒税、たばこ税だろう。

ガソリンは1リットルあたり53.8円、お酒は、ビールの場合350ミリリットル缶で77円(2026年までにビールと発泡酒を含むビール系飲料の税率を一本化し約55円に統一する方向)、1箱440円のたばこで244.88円だ。

税に税をかけるのは二重課税ではないのか

これらは国や地方等の大きな財源になっている。これだけ税額が大きいとおかしなことに気付く人も多いはずだ。ガソリン、酒、たばこの販売価格にはこれらの税金が含まれている。それに対して現行8%の消費税を払っているということは税金税金が課されているということだ。これは「二重課税(Tax on Tax)」であり、課税権の乱用ではないのかという疑問だ。

ガソリン税を例に考えてみよう。レギュラーガソリン1リットル140円(ガソリン税を含む)だとすると、ガソリンを満タン50リットル入れると代金は7000円になり、それに消費税8%の560円が加算され、7560円を支払うことになる。すなわち、ガソリン税にも消費税が課されていると消費者は理解するだろう。もし140円のうちのガソリン税53.8円抜き価格86.2円に消費税を課すこととして、両税を加えたら、支払い金額は7344円(消費税は344円)ほどになる。その差は216円だ。

毎月50リッター利用する人はこの12倍の年間2592円、毎週使う人は48週とすると10368円を税金に対する税金として支払っていることになる。たばこもお酒も同様であり、たばこも酒もドライブも好きな人は一生でいくら払っているのだろうか。

一方でディーゼル車に乗っている人にはこうした支払いは生じていないことをご存じだろうか?

ディーゼル車には軽油を給油する。軽油には軽油引取税が1リットルあたり32.1円課されるが、軽油の場合は軽油引取税を含めた軽油の価格に消費税を課すことはせず、軽油引取税を課す前の軽油価格に8%の消費税を課し、それと軽油引取税を加える仕組みになっている(筆者注:この他、ガソリン、軽油とも1リットルあたり2.54円の石油石炭税が課されているがここでは省略して説明している)。

なぜこのようなことが起きているのか? 国税庁はその違いにつき以下のように説明している(一部抜粋、揮発油税は本稿でのガソリン税を指す)。

 消費税の課税標準である課税資産の譲渡等の対価の額には、酒税、たばこ税、揮発油税、石油石炭税、石油ガス税などが含まれます。これは、酒税やたばこ税などの個別消費税は、メーカーなどが納税義務者となって負担する税金であり、その販売価額の一部を構成しているので、課税標準に含まれるとされているものです。
 これに対して、入湯税、ゴルフ場利用税、軽油引取税などは、利用者などが納税義務者となっているものですから、その税額に相当する金額を請求書や領収証等で相手方に明らかにし、預り金又は立替金等の科目で経理するなど明確に区分している場合には、課税資産の譲渡等の対価の額には含まれないことになります(国税庁HP上のタックスアンサーNo.6313「たばこ税、酒税などの個別消費税の取扱い」)

税もコストの一部という理屈

意味を理解できるだろうか。ガソリン税はメーカーなどが納税義務者であるから販売価格の一部であり、軽油の場合は、軽油引取税は利用者が納税義務者となっているから軽油販売価格の一部を構成していない。それゆえに違いが出るという見解だ。ガソリンと同様にお酒やたばこも消費者から見ると税金税金が課されていることになる。

そもそも企業は固定資産税や法人税など多くの税金を払っている。それらはその企業が販売するモノの価格にコストとして転嫁されている訳だから、ガソリン税、酒税、たばこ税に消費税がかけられるのも当然であるという理屈なのだ。

しかしながらこれらの税金は消費者が購入するモノにかけられているものであり、税額も高額であるから消費者からみると納得できない二重課税という印象が強い。

軽油引取税にはこうしたことが起きないのは、軽油を給油するディーゼル車の多くが産業用であり、消費者には容赦なく課税し、産業・業界に配慮した税制という批判も出てこよう。さらに免税軽油という制度もある。軽油引取税には消費税が加算されないばかりか、軽油引取税自体を特定の産業の用途(運送業、農業など)には免税する制度だ。

これは期限を設けて免税をする時限法制だが、期限が来るたびに延長を繰り返している(免税対象用途には多少の廃止がある)。課税政策は声の大きい者の理屈が通る世界のように筆者は感じる。

いくらでも新たな税が作られる可能性も

たとえば、熱海市は住民登録をしていない別荘所有者には固定資産税に加え、別荘等所有税を全国で唯一課している。税率は延べ床面積1平方メートルにつき年額650円だ。これは納税義務者が同じであり、不当な二重課税ではないのか?熱海市の見解はこうだ(熱海市HPの別荘等所有Q&A質問6より)。

固定資産税は家屋の価格(評価額)、別荘等所有税は述べ床面積をそれぞれ課税標準として課税されており、課税標準が異なっていますので二重課税とはなりません。

この理屈が通るのなら、さらに建物の高さで税金を取ることも可能なのだろうか? 余談だが、英国では昔、建物における窓の数に応じて課税される「Window Tax(窓税)」税金まであった。納税義務者に加え対象が同じでも、課税標準が異なるから問題ないといわれてしまえば、いかようにも新しい税ができるだろう。

そもそも自動車は自動車取得税、自動車税、自動車重量税を取られ、さらに消費税、ガソリンを入れればガソリン税が取られる。これらには自動車による交通問題の解消、環境対策などの政策目的もあるが、消費者の税負担はかなり大きい。

いつの間にか産業界に甘く、一般の消費者に厳しい税制が作られる可能性がある。消費者がしっかり声を上げる必要性を感じる。