by Wenni Zhou

2015年の国勢調査の結果、日本では50歳まで一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」が男性で23.37%、女性で14.06%となっており、2010年の結果と比べて急上昇したことが発表されています。結婚に関する問題は日本だけのものではなく、中国やインドでは男児が生まれるよう調整される傾向があったことから男性の数が女性の数よりも多くなり、結果として未婚男性が社会問題化。国外から花嫁を輸入するという状態になっているとThe Mercury Newsが伝えています。

China, India grapple with the consequences too many men

https://www.mercurynews.com/2018/04/22/china-india-grapple-with-the-consequences-too-many-men/

中国の人口は14億人ですが、男性の方が女性よりも3400万人ほど多いといわれています。人口比で考えるとそこまで差が無いようにも思えますが、3400万人という数はポーランドの人口に等しく、ポーランド人がすべて男性で、結婚できずに一生を過ごすと考えればことの重大さがよくわかります。中国は1979年から2015年まで一人っ子政策をとっていたため、1人の子どもが男児になるよう調整されたことが、男女比のアンバランスさの大きな原因となっているとのこと。

独身男性が増えることで、男性、とくに田舎に住む男性が結婚できずに暮らすことが増え、メンタルヘルスに大きく影響することが懸念されています。また、女性を引きつけるために中国では独身男性が家を建てることがありますが、支払いが行えずに余剰な住宅が生まれるという問題が起こっています。

そして、花嫁不足によって「国外から花嫁を輸入する」という行為の需要も増加。花嫁が中国に輸出された結果、近隣諸国でも花嫁不足が起こるという事態も発生しています。

中国・楽平市に住むLiu Huaさんは、中国国内で花嫁を見つけることができず、海外の女性と結婚するためにお金を払った1人。Huaさんは姉妹と母親の助けを借り、花婿を探すために中国にやってきたカンボジア人女性の中から、笑顔がかわいいスリムな女性を選びました。Huaさんの村では独身男性が50〜60人いるのに対し、独身女性はたった2人しかおらず、「40歳を超えた男性にとってカンボジアの女性はセカンドチャンスのようなものです」とのこと。

「田舎に住む人々は、『外国人の妻は、中国の妻よりもよくない』と考えています。最初はみんな、彼女が逃げていくと思っていましたが、今は違います。彼女は逃げませんでしたし、近隣住民に対してもとてもフレンドリーで、礼儀正しく振る舞ったためです。今ではみんなが彼女のすばらしさについて語っています」とHuaさんは語りました。

楽平市はカンボジア人花嫁の取引の中心地として機能している場所。Huaさんの妻であるLiliさんは、育った土地が貧しかったことから花嫁不足である中国に花婿を探しにきた何万人もの女性のうちの1人です。



by Chiến Phạm

ただし、女性にとって他国で家族の一員になるというのは、大きなギャンブルです。「義理の娘」というのは家族の中で最も低い地位になり、特に外国人となれば、文字通り「買われた」という扱いになってもおかしくないためです。

上記のような理由から、Liliさんの母親は中国に嫁ぐことに反対していました。しかし、Liliさんの父親は既に他界しており、3人の弟を学校に行かせるためにLiliさんはお金を必要としていました。Liliさんが住んでいたカンボジアのコンポンチャムには働き口がなく、しかしカンボジアでは文化的に娘は家族を金銭的に支えるものと考えられていることから、Liliさんは結婚を決意。「母親のために、お金が必要だったのです」とLiliさんは語っています。

Liliさんの結婚に際し支払われたお金は450ドル(約5万円)と旅費。そして中国到着後に給料のよい工場で働けるようにするという約束がブローカーとの間で結ばれました。

HuaさんはLiliさんと結婚する前、中国人家族の娘と結婚前提の交際を行うために頭金として5000ドル〜4万ドル(約55万円〜440万円)を支払っています。これらは破談したため、そのうちいくらかがいくらかがキャッシュバックとして戻ってきたとのこと。

中国人家族は要求が多く、疲れ切ったHuaさんはカンボジア人女性と結婚するためにブローカーに1万5000ドル(約160万円)を支払い、最終的にLiliさんとの結婚にいきつきました。2人の間には2018年現在1歳になる娘のSisiちゃんと4歳になるSiyiuanくんが生まれています。ブローカーを通したものの、2人は自分たちの結婚を「売買」ではなく、「正真正銘の結婚」だと見ているとのこと。

写真に写っているのが、LiliさんとSiyiuanくん、そしてHuaさんです。



ただし、結婚のために夫がどのくらいのお金を支払ったのかを知り、ブローカーが嘘をついてお金のほとんどを奪っていったこと、そして約束されていた仕事につけてないことに対し、Liliさんは怒りを感じているといいます。

Huaさんは塗装工・装飾家として働いており、仕事のために家を不在にすることもしばしば。そのため、Liliさんは1人で1日中子どもの世話をすることになります。ただし、Liliさんの義理の母にあたるHuaさんの母親はLiliさんに同情的であり、2017年に中国を訪れた実の母親には家族のためのお金として1500ドル(約16万円)が支払われたとのことなので、Liliさんは「幸運な結婚ができたうちの1人」とみられています。

「夫はとてもいい人で、私によくしてくれます。カンボジアに戻りたいとは思いません。子どもも2人いますので」とLiliさん。

Liliさんとは反対に、無理やり結婚させられ、結婚後にひどい扱いを受けたカンボジア人女性もいます。

カンボジアの首都・プノンペンに暮らす32歳の女性は、工場での仕事を用意するとそそのかされて中国にやってきたところ、到着するなり好きでもない男性と結婚させられたといいます。男性は女性に対し、「お前は俺の奴隷だ。俺はお前を買ったから、俺はお前を好きなようにできる」と語ったそうです。

男性の家族は女性が逃げられないようにするため家に閉じ込め、男性は1日に4回性行為を要求しました。女性が性行為を断ると殴られたといいます。

女性は後に女児を出産しましたが、この時も男性は出産から7日後に性行為を要求。女性が拒否すると、やはり男性は女性を殴りました。その2年後に流産した時は、男性家族が治療を受けさせることを拒否したため、女性は死にかけたそうです。

中国にわたってからの3年間、女性はカンボジアの母親を心配させないように、そしてお金を実家に送れていないことに引け目を感じていたことから、カンボジアの家族と連絡を取っていませんでした。しかし、最終的に女性は兄弟に電話をかけ、兄弟のはからいで「病気の母親と面会する」という理由をつけて嫁ぎ先を離れるよう男性家族を説得しました。しかし、「娘は置いていくこと」という条件を、どうしても飲まざるを得なかったとのこと。

女性は3歳になる娘と1年以上も会うことができていません。そして、罪悪感にかられながらプノンペン郊外にある被服縫製工場で低賃金で働いているといいます。



by Kris Atomic

中国への結婚移民に関するプロジェクトを率いるマンチェスター大学のElena Barabantseva氏は、カンボジアだけでなく、ロシアから結婚を求めて中国に移る女性が増えていることを指摘しています。ロシアの女性はかつて欧州に結婚相手を求めていましたが、近年は裕福な男性を求めて中国の都市部に移り住む傾向にあるとのこと。肌が白く欧州人の特徴を備えたロシア人女性は、「ちゃんと教育を受けているが欧州人に比べて自由すぎず、かつ近づきやすい」という理由により、中国の人々から引っ張りだこだそうです。

中国人男性に対して提供される、ロシアやウクライナへの花嫁探し旅「マリッジツアー」なるものも存在します。このツアーは中国人男性が数日かけて10〜20人の女性に会うというもので、料金は5000ドル(約55万円)ほど。結婚相手が見つかった場合、料金は8000ドルに(約87万円)に跳ね上がります。

そして、ロシア人よりも多いのが、中国にわたるベトナム人花嫁であると、結婚移民について研究を行うCaroline Grillot氏は語っています。中国南部の国境地帯では20年前ごろから結婚移民が見られるようになり、2018年現在はかなりの数の花嫁候補が存在するそうです。

ベトナム人女性は中国人女性よりも要求が少なく、また伝統的な家族の価値を重視する傾向にあります。Grillot氏によると、ベトナム人女性に求められるのは白い肌や大きな目、細い腰であり、反対にベトナム人女性が夫に求めるのは単なる「財布」の役割ではなく、働き者で家族に重きを置く「同胞」であるとのこと。

ベトナム人花嫁の人気は、中国人男性に対してベトナム人女性をマッチングさせるサービス「ZhongYueLove.com」を見てもわかります。ZhongYueLove.comでは、花嫁が処女でなかった場合の返金保証や、花嫁が1年以内に逃げてしまったときの交換サービスも提供しています。

このほか、ミャンマーやラオスから、中国南部の雲南省に花婿を求めて入って来る女性もいるといいます。雲南省は比較的貧しい地域が多く、田舎部の女性はより裕福な男性を求めて中心地である都会に移り住むため、ラオスやミャンマーの女性は、これらの女性と置き換わる形で花嫁となるそうです。



by abbyladybug