米研究レポート『ポケモンGOによる死』の気になる中身
ポケモンGOのリリース後、インディアナ州ティピカヌー郡における約1万2000件の交通事故の、警察による報告書を精査したところ、ポケストップ付近での車両衝突事故や交通死傷事故の発生件数が、異常に増加していることが判明した。
伝説のポケモン「ミュウツー」を捕獲するため、人々は文字通り命を懸けている。パデュー大学の最近の研究によると、インディアナ州のある郡では、人気のARモバイルゲーム「Pokémon Go(以下、ポケモンGO)」がリリースされて以降、数カ月間で交通事故の件数が急増したという。同研究は現在ピアレビュー待ちで、この原稿を執筆している現在、正式には公開されていない。
『ポケモンGOによる死(Death By Pokémon GO)』と題された調査研究レポートは、パデュー大学に所属する2人の経済学者マーラ・ファッチオ教授とジョン・J・マコーネル教授によってまとめられた。ファッチオ教授が、ローリングストーン誌のビデオゲームカテゴリー・Glixelに語ったところによると、同調査研究は、彼女の友人の一人が車を運転しながらポケモンGOをプレイしていることを告白したのがきっかけだったという。2人の教授は、インディアナ州ティピカヌー郡における約1万2000件の交通事故の、警察による報告書を精査した。その結果、ポケストップ付近での車両衝突事故や交通死傷事故の発生件数が、異常に増加していることが判明した。ポケストップは、プレイヤーがポケボールやゲーム内アイテムを集められる現実世界のスポットである。
同調査研究によると、ポケモンGOがリリースされてから最初の148日間に同郡内で発生した交通事故の内134件が、ポケモンGOが何らかの原因だったとしている。車両の破損に加え、31人の負傷者と2人の死亡者が発生し、損害額の総額は49万8567ドル(約5410万円)に上るという。それぞれの交通事故が、学校の休日や天候など他の要因によるものでなく、ポケモンGOに起因するものであると、どのように判断したのだろうか? ファッチオ教授とマコーネル教授は、各事故の原因を解明するための分析の対象時間を狭めたという。
「そうすることで、分析結果を左右する不確定要素となる、隠れた衝突を大幅に排除することができる。分析対象時間を絞り込むことにより、対象時間外に発生した不明確な事象を構造的に除外できる」と、研究報告書に記載している。
調査研究はまた、ゲームをしながらの運転が交通事故につながったことを証明するため、ポケストップとポケジムを比較検討している。運転中に、道路沿いのポケストップからモンスターボール等を素早く入手することはできても、ポケモンを捕まえたりジムバトルに参加したりすることはまず不可能だ。これを踏まえて両教授は、ポケジムとポケストップそれぞれの付近で発生した交通事故件数の変遷を比較した。結果、ポケストップ周辺での急激な事故増加が判明した。
今回の調査研究結果を州全体や全米にもあてはめるのは”推論的”であるとしながらも、両教授は、ポケモンGOのリリースから5カ月の間に発生した、運転中にポケモンGOをプレイしていたことが原因である交通事故件数は、全米で14万5000件以上、負傷者は2万9000人以上、さらに死亡者は256人と推計できる、としている。また、これら事故による経済コストは、全国で20億〜73億ドルに及ぶという。
「これらの数字は、政策提言の根拠となりえる。すぐに実行できるのは、運転中のスマホ操作の禁則強化を勧告することだ」と、両教授は書いている。
運転中のポケモンGOの影響について調査したのは、ファッチオ教授とマコーネル教授が初めてではない。2016年、米高速道路交通安全局(NHTSA)は独自調査を委託し、米国医師会ジャーナルに発表した。調査員たちは、2016年7月10日〜19日にかけて、GoogleニュースやTwitterから「ポケモン」や「運転」といったキーワードによる検索結果を基に、データマイニングを実施した。約35万件のツイートからランダムに4000件を抽出して調査員たちへ割り当て、運転者、同乗者、歩行者がポケモンGOをプレイしていたかどうかを判定させた。結果、33%のツイートで、事故に関わった誰かしらがポケモンGOによって注意散漫になっていたことが判明した。わずか10日間で11万3000件以上のポケモンGOに関わる事故が抽出されたことになる。
現時点でモバイルビデオゲームは、ある意味で法的なグレイゾーンにある。(米国では)運転中のメール送信や通話は合法であるが、多くの州法ではポケモンGOのようなゲームアプリについて明示していない。この状況は徐々に変わりつつある。2016年、カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンは、運転中のゲームを含むスマホや携帯電話のほとんどの操作を禁止する新たな法律に署名した。運転中はスマホや携帯電話を固定している場合に限り、タップするだけのシンプルな操作は許される。ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)など配車サービスのドライバーは、運転中にスマホや携帯電話を操作することを許されているが、リザードンを捕獲する行為は禁止されている。
ポケモンGOの開発元であるナイアンティックもまた、自主規制に取り組んでいる。2016年、プレイヤーが乗り物で移動中であることをアプリが検知し、プレイヤーに運転者か同乗者かを確認表示する機能を追加した。時速30マイル(約時速48km)以上で走る車に乗っている場合、ポケモンが出現しないようになっている(2017年12月時点での米国内の仕様)。もちろんこれが確実な対策という訳ではない。制限時速以下で運転しながらポケモンGOをプレイすることはできてしまうが、絶対にお勧めしない。
伝説のポケモン「ミュウツー」を捕獲するため、人々は文字通り命を懸けている。パデュー大学の最近の研究によると、インディアナ州のある郡では、人気のARモバイルゲーム「Pokémon Go(以下、ポケモンGO)」がリリースされて以降、数カ月間で交通事故の件数が急増したという。同研究は現在ピアレビュー待ちで、この原稿を執筆している現在、正式には公開されていない。
同調査研究によると、ポケモンGOがリリースされてから最初の148日間に同郡内で発生した交通事故の内134件が、ポケモンGOが何らかの原因だったとしている。車両の破損に加え、31人の負傷者と2人の死亡者が発生し、損害額の総額は49万8567ドル(約5410万円)に上るという。それぞれの交通事故が、学校の休日や天候など他の要因によるものでなく、ポケモンGOに起因するものであると、どのように判断したのだろうか? ファッチオ教授とマコーネル教授は、各事故の原因を解明するための分析の対象時間を狭めたという。
「そうすることで、分析結果を左右する不確定要素となる、隠れた衝突を大幅に排除することができる。分析対象時間を絞り込むことにより、対象時間外に発生した不明確な事象を構造的に除外できる」と、研究報告書に記載している。
調査研究はまた、ゲームをしながらの運転が交通事故につながったことを証明するため、ポケストップとポケジムを比較検討している。運転中に、道路沿いのポケストップからモンスターボール等を素早く入手することはできても、ポケモンを捕まえたりジムバトルに参加したりすることはまず不可能だ。これを踏まえて両教授は、ポケジムとポケストップそれぞれの付近で発生した交通事故件数の変遷を比較した。結果、ポケストップ周辺での急激な事故増加が判明した。
今回の調査研究結果を州全体や全米にもあてはめるのは”推論的”であるとしながらも、両教授は、ポケモンGOのリリースから5カ月の間に発生した、運転中にポケモンGOをプレイしていたことが原因である交通事故件数は、全米で14万5000件以上、負傷者は2万9000人以上、さらに死亡者は256人と推計できる、としている。また、これら事故による経済コストは、全国で20億〜73億ドルに及ぶという。
「これらの数字は、政策提言の根拠となりえる。すぐに実行できるのは、運転中のスマホ操作の禁則強化を勧告することだ」と、両教授は書いている。
運転中のポケモンGOの影響について調査したのは、ファッチオ教授とマコーネル教授が初めてではない。2016年、米高速道路交通安全局(NHTSA)は独自調査を委託し、米国医師会ジャーナルに発表した。調査員たちは、2016年7月10日〜19日にかけて、GoogleニュースやTwitterから「ポケモン」や「運転」といったキーワードによる検索結果を基に、データマイニングを実施した。約35万件のツイートからランダムに4000件を抽出して調査員たちへ割り当て、運転者、同乗者、歩行者がポケモンGOをプレイしていたかどうかを判定させた。結果、33%のツイートで、事故に関わった誰かしらがポケモンGOによって注意散漫になっていたことが判明した。わずか10日間で11万3000件以上のポケモンGOに関わる事故が抽出されたことになる。
現時点でモバイルビデオゲームは、ある意味で法的なグレイゾーンにある。(米国では)運転中のメール送信や通話は合法であるが、多くの州法ではポケモンGOのようなゲームアプリについて明示していない。この状況は徐々に変わりつつある。2016年、カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンは、運転中のゲームを含むスマホや携帯電話のほとんどの操作を禁止する新たな法律に署名した。運転中はスマホや携帯電話を固定している場合に限り、タップするだけのシンプルな操作は許される。ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)など配車サービスのドライバーは、運転中にスマホや携帯電話を操作することを許されているが、リザードンを捕獲する行為は禁止されている。
ポケモンGOの開発元であるナイアンティックもまた、自主規制に取り組んでいる。2016年、プレイヤーが乗り物で移動中であることをアプリが検知し、プレイヤーに運転者か同乗者かを確認表示する機能を追加した。時速30マイル(約時速48km)以上で走る車に乗っている場合、ポケモンが出現しないようになっている(2017年12月時点での米国内の仕様)。もちろんこれが確実な対策という訳ではない。制限時速以下で運転しながらポケモンGOをプレイすることはできてしまうが、絶対にお勧めしない。