Unicode絵文字にプログラマや歌手など11職種が追加、性別も指定可能に。既存33字も性別選択に対応

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Unicode絵文字に『プログラマー』や『ロックスター』など職業を表す11字が加わります。新絵文字は男女の性別セレクタに対応し、女性医師や男性コックなどを明示的に指定可能です。

同時に、人を描いた既存の絵文字33種にも性別指定の仕組みが定められました。従来は多くのプラットフォームで男性として描かれていた警察官を女性に指定したり、ほぼ女性として描かれる『散髪(される人)』を男にすることもできます。

今回のUnicode絵文字拡張は、もともと Google が絵文字における男女の平等や、さまざまな職業に就く女性を表現できるようにと提案していたもの。

7月14日、Unicodeの絵文字小委員会がGoogleの提案に合意したことで、今後はGoogle やアップル、Facebookなど、ユニコード絵文字を使う各プラットフォーム側で新しい職業11種類や、男女バージョンの選択を実装できるようになります。

追加される新しいプロフェッショナル絵文字は以下の11種類:

農業従事者

溶接工

メカニック

医療従事者

コーダー(プログラマー)

科学者

オフィスワーカー

シェフ

学生

教師

ロックスター(歌手、パフォーマー等)

サンプル画像では『科学者』が保護メガネに試験管を持った化学者のようだったり、『ロックスター』はフェイスペイントにハンドサインなどかなり分野を限定しているように見えますが、農業従事者(Farmer)が稲を携えていても稲作農家限定ではないように、一応は分野を代表するシンボルとしてのデザイン例です。

もともとのGoogle提案では13の職業(分野)が挙げられていましたが、Unicodeの絵文字小委員会は『医者』と『看護師』を医療従事者として統合したり、ハイテク産業従事者(組立ライン工)を省略するなどで、最終的には11種が選ばれました。

合わせて、既存絵文字のうち人物を描いた33種類でも、男女を指定できるように拡張されます。

現在はさまざまなプラットフォームで使われる " Emoji " ですが、表現力も少ない時代の日本の携帯電話向けに開発された絵文字がユニコードに輸入されるかたちで発展したため、国際的な普及や『絵』の表現力向上につれて、従来にない問題が発生してきたのはご存知のとおり。

かつては性別も人種も指定しないシンボルだったはずの字に対して、解像度が高くフルカラーの写実的なイラストが割り当てられたことで、絵文字は(白人ばっかりにみえるから)人種差別的である、人種や性別の多様性を反映していない、といった批判も生まれるようになりました。

こうした批判のうち人種多様性については、標準をスマイリーのような濃い黄色として、追加のセレクタで白から濃い褐色まで5色を選べる仕組みがすでに導入されています。

新たに追加される職業11字+既存33文字についても、まったく新たな文字を人種や性別のぶん掛け算してユニコード符号化するのではなく、内部的には「既存の文字(シンボル)」プラス「男または女」や「肌の色の指定子」の形式で表現します。

たとえば『女医』は、既存の『女性』と『⚕』を並べた文字列として表現されます(『⚕』は医術を象徴するアスクレピオスの杖)。

このとき、『女性』と『⚕』のあいだをUnicodeの機能文字ZWJでつなぐことで、対応する環境では一文字の『女医』として描画される仕組みです。

ZWJは「Zero Width Joiner」。ZWJで接続された文字列は、用意されているならば一文字で表示することを示す結合指示子。

同様に、以前からある『警察官』と『女性』をZWJでつなげば女性警察官に、さらに肌の色指定をくっつければ、用意されているプラットフォームならば対応した絵文字で表現されます。

このZWJで接続したシーケンスを使うことで、時間をかけて新たな文字を制定してユニコードに組み込む必要がなく、また非対応の環境でも豆腐や文字化けではなく意味は通じる文字列として表示できる仕組みです。

ユーザーが入力する際には、現在の絵文字入力と同様に変換候補や絵文字バレットから選択するだけで、内部的な表現を意識することはありません。

(余談ながら、iOS や Android ですでに導入済みの男女以外のカップルや、一気にバリエーションが増えた家族の絵文字も、内部的にはこのZWJシーケンス方式で表現されています。たとえば女性同士のキスは一文字として表示されますが、内部的には『女性+ハート+唇+女性』。

このため、たとえばツイッターでは『(男女の)キス』絵文字は1文字扱い、女性同士や男性同士のキスは内部的に文字列なので8文字扱い。対応が中途半端な環境やアプリでは、実体は複合文字列の絵文字を削除しようとすると、見た目は一文字なのに構成要素を部分的に消してしまい文字化けが発生することもあります。)

この「ZWJシーケンスを使った性別指定」(Gender Emoji ZWJ Sequences)の仕組みが定められたことで、『警察官』『ヘアカット』のように、本来の定義としては性別指定を含まないもののデザイン的には男性や女性のように描かれることが多い絵文字に対して、メーカー側が性別を指定しないニュートラルな絵文字に描き直すことも可能性としてはあり得ます。

が、ドット絵の棒人間だった時代ならばさておき高解像度イラストになってしまった Emoji でジェンダーニュートラルは難しく、結局は男女二種類でデフォルトどちらか、になるかもしれません。

この Gender Emoji ZWJ Sequences の仕組みはユニコードの絵文字小委員会が導入に合意したものの、現在はまだドラフトの段階です。

しかし既存の文字の組み合わせで表現する仕組みのため、ユニコードの新バージョンを待つ必要はなく、メーカー側は今から実装とデザインを始めれば2016年内に導入が可能とされています。実際に使えるようになるのは、Googleやアップルなどメーカー側がこの仕組を導入して、ソフトウェアをアップデートしてからになります。