花街と聞くと、「自分とは縁遠い場所」などと思ってしまいがちですが、桜の見頃に五花街で行われる「春のをどり」は誰でもが楽しめるイベントです。今回の無料メルマガ『おもしろい京都案内』では、4月7日まで開催されている「北野をどり」を徹底紹介。日常とはひと味もふた味も違う雅やかな世界に酔いしれてみてはいかがでしょうか。

上七軒「北野をどり」(3月25日〜4月7日)

桜も見頃になると花街にも春を告げるイベントが続きます。五花街(かがい)の春のをどりが華やかに始まるのです。

京都の花街は1589年、日本初の官許の廓である島原をはじめ、上七軒、祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町がありました。長らく「六花街」と呼ばれて京文化の一翼を担ってきたのですが、島原だけがなくなり現在は五花街が残っています。そのうち祇園東を除く4か所の花街では、3月から5月まで各々の地域にある歌舞練場でをどりが開催されます。

そのトップを飾るのが例年3月25日から4月7日まで開催される京都最古の花街である西陣・上七軒の北野をどりです。その後4月には祇園の都をどり、宮川町の京おどり、5月には先斗町の鴨川をどりと約2カ月間続きます。

京都の春は桜だけでなく、ひときわ艶やかな花街の舞台に彩られるのです。京都でお花見はとても優雅な時間ですが、今回のもうワンランク上のひとときは豪華な春の京都をご案内します。

上七軒は室町時代に北野天満宮が再建された時に残った資材を使って東門前に七軒の茶屋が建てられたのが始まりです。1587年、秀吉が北野大茶湯(だいちゃのゆ)というお茶会を開いたときに休憩所として使われたという由緒ある場所です。当時、茶店が団子を献上し、その褒美としてみたらし団子を商う特権や茶屋株を公許され営業が始まりました。この時から上七軒はみたらし団子をあしらった五つ団子を紋章にしています。上七軒の舞踊は花柳(はなやぎ)流で春に北野をどり、秋に寿会を開催しています。

北野をどりを観るのであればせっかくなので4,800円の特別席茶券付きのチケットをお求め下さい。舞台の前列で芸舞妓さんを目の前で見ることが出来るだけでなく、開演前に舞妓さんが目の前でお点前を披露してくれます。私などは常に一番前の舞台中央の一番良い席を選んで観ることにしています(週末とかでなければほぼ必ずと言っていいぐらい当日券でも1枚とかなら手に入ります)。

次ページ>>雅やかな舞に魅了される80分は、感動で涙があふれる

それでは上七軒歌舞練場の北野をどりにご案内します。

歌舞練場とは舞妓さんや芸妓さんが演舞を披露する劇場のことです。北野をどりの会場である上七軒歌舞練場は北野天満宮の門前に栄えた花街にあり、明治30年代の建築とされています。赤い提灯が揺れる雅な雰囲気の建物はとても京都らしい風情を感じます。来ているお客さんは贔屓筋や日頃花街に通う旦那衆など華やかな大人の方達が多く少し身が引き締まる感じです。

お茶券付きのチケットで入るとまず2階のお茶席に案内されます。ここで舞妓さんがお茶のお点前を披露してくれます。運よく最前列に座れたら、舞妓さんがお抹茶を運んできてくれることになります。間近で見る舞妓さんはとても美しくお茶の味を忘れてしまうほどです。作法は先にお菓子を頂いてからお茶が運ばれてくるのを待ちます。お菓子は北野の老舗「老松」の饅頭で、お皿は記念品として持ち帰ることができます。非売品の器なので嬉しいお土産です。近くで見る舞妓さんの帯や着物、帯どめや簪などの衣装や部屋のしつらえなど見るべきものが沢山あります。

お茶を頂き少しすると、いよいよ開演です。会場へは美しい日本庭園の庭を見ながら渡り廊下を進みます。このプロローグの時間がムードが高まっていく瞬間で何ともテンションが上がっていきます。

演目は二部に分かれています。第一部は舞踊劇で北野をどりの特徴でもあります。ストーリー性に富んだわかりやすい舞台です。約45分間の一幕目の後は約10分の休憩があります。

第二部は芸舞妓の素踊りや祝舞など花柳界ならではの舞台です。幕が上がると場内からはドッと歓声が上がるほどまぶしい桜のセットと華やかな舞妓さんの衣装に釘づけとなります。初々しい舞妓さん、艶やかな芸妓さんの舞をたっぷりと堪能することが出来ます。

そして北野をどりで大人気なのが大トリのフィナーレ上七軒夜曲(やきょく)です。上七軒夜曲は毎年恒例の舞で揃いの黒裾引姿の芸妓と、色とりどりの華やかな衣装の舞妓が全員揃う豪華な演出です。最後は花吹雪が舞い、最後まで目が離せない演出に大満足することでしょう。約1時間20分はあっと言う間に過ぎ興奮冷めやらない状態で幕が下ります。

次ページ>>をどりを観た後に立ち寄りたい、上七軒で元芸子が開いた喫茶店

取りあえずは上七軒の花街に昔ながらの純喫茶風の喫茶店やおそば屋さんなどで余韻に浸りましょう。おススメは純喫茶「静香」です。京都でも1、2を争う老舗の喫茶店です。昭和12年に当時上七軒の芸妓さんだった方が引退して開いたお店です。今はその後すぐにお店を任された方のお子さんが継いでらっしゃいます。とても品のいいかわいいおばあちゃんが1人で店を切り盛りしているようです。せっかく来たのだからレトロな花街の雰囲気を満喫して帰りましょう。

何度見てもこの世のものとは思えないほど美しいもので毎回感動して涙が出てしまいます。数年前、高齢の女性が「これが見たいから毎年元気でいられるのよ」とおっしゃっていたのが印象に残っています。その意味は本当によくわかります。

動きがあるものには言葉では説明できない感動があります。私も何度も前の席やステージにしがみついて泣いていてなかなか席を立ち上がれないぐらい感動しました。北野をどり、都をどり、京おどり、鴨川をどりとそれぞれに良さがあり、とても感動的なのです。次回は五花街のをどりの先駆けとなった一番有名な祇園甲の部都をどりをお伝えします。

かつては今ほど庶民の着るものに色とりどりのものなどなかったでしょう。街を歩いても鮮やかな色のものを見るようなことなどなかった時代です。そんなモノトーンな時代にあれだけの色彩を持つ帯や着物がどれほど鮮やかで美しかったことでしょう。今見ても目を見張るほど美しいのに、昔の人たちはどれだけ魅了されたことでしょう。

をどりを披露している芸舞妓さんは忠実に昔のままを受け継いでいます。足の先からつま先まで美しく伸びた姿勢や舞の所作の美しさはそのころのままのはずです。彼女たちは昔の美しい日本人そのものなのです。現代の女性はより美しくなったことでしょう。でも内面から滲み出る日本女性の美は現代の大和撫子とは異次元の美しさを感じます。

昔と比べて美しいもの、美しい女性が身の回りにも沢山存在します。それでもそれを超越してしまうほどの強烈な美を是非堪能してみて下さい。

● 北野をどり2016 日程
3月25日(金)〜4月7日(木)まで14日間
13:30〜と16:00からの1日2回公演
詳しくはホームページをご覧ください。
・上七軒歌舞会公式ホームページ 

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Wikimedia Commons

 

『おもしろい京都案内』
毎年5,000万人以上の観光客が訪れる京都の魅力を紹介。特にガイドブックには載っていない京都の意外な素顔、魅力を発信しています。京都検定合格を目指している方、京都ファン必見! 京都人も知らない京都の魅力を沢山お伝えしていきます。
<<登録はこちら>>

出典元:まぐまぐニュース!