◇宣伝から始まるインタビュー、読みたいですか?


土屋:どういう人のインタビューが一番得意なんですか。

吉田:世間で叩かれてる人が得意ですね、敵の多い人。

土屋:それはどうして?

吉田:僕が世間の側に立たないからですね。その人が面白ければそこをそのまま評価するので。昔、暴排条例が話題になった直後に小林旭さんをインタビューしたんですけど、その記事が掲載された「SPA!」の表紙が画期的だったんですよ。見出しが「俺がヤクザとゴルフしたからって、誰が困るってんだよ」。インタビューでも「暴排条例後にこれいいんだっけ!?」って発言が連発されて最高でした。ボクはそれを一切批判せず、「ダハハハハ!」「いい時代でしたね!」って感じで受け身を取り続けるので。

土屋:宣伝が絡んだインタビューはどうしてますか。

吉田:最終的に相手が得するようには書いてます。でも、それは「記事がおもしろければ得するだろう」くらいの線引きですね。

土屋:なんでそんなことができるんですか? なんか「豪さんだったら仕方ない」「篠山紀信だったら脱いじゃう」みたいなところがあるじゃないですか。

吉田:自分の本(聞き出す力/日本文芸社)でも書いたんですが、学生時代からすでにそういう感じがあったんだとは思います。ボクがカマかける感じで言ったのに、「豪ちゃんはなんでもお見通しだからな」って聞いてもないことまで全部教えてくれるんですよ。あとは「損させませんよ」って空気が出せるかどうかだと思うんです。「この人は敵じゃないから心を開いて全部話したたほうがプラスになるんじゃないかな」って空気を作っていく。

土屋:他のインタビュアーの映像とか文章とかを見てどう思うんですか?

吉田:ものすごく答えづらい質問ですね(笑)。基本、同じ人を同じ時期に取材しているのを見たりすると、ボクはいつもガッツポーズしてますよ。「勝った!」って。

土屋:それはいかに、相手が普段話してないようなことを聞き出すかなんでしょうか?

吉田:他の人はどうしてもビジネスモードというか、まず作品の話から始まって、CMっぽくなりすぎたインタビューになりがちじゃないですか。ボクが常々思っていることなんですけど、たとえパブリシティの仕事だとしても、作品の話から始まってみんなその記事を読むのかなぁって。それって、テレビ番組の冒頭からずっとCMが続いているようなもの。CMは合間合間に入るから見るわけで、全編CMみたいになってる番組は見ないですよ。でも、CMにしかなっていない記事が多いんですよ。

土屋:僕は、相手の宣伝になるようにと思ってインタビューしてしまう。それじゃダメなんですね。

吉田:宣伝会社の人はそれで喜ぶかもしれないけど、ミュージシャンなり俳優さんなりは宣伝に飽きてるじゃないですか。だから「もっと楽しい話がしたいんだけど」というモードになっていると助かる。パブリシティ部分は別枠で作ればいいだけなので。

土屋:僕の場合はラジオブースの外にいつもマネージャーさんがいるんですよ。で、こっちで面白い話ばっかりしていると、マネージャーさんが少しイライラしているのがわかる。

吉田:それとの戦いなんですよね。ボクもいまだに叱られますから。盛り上がってる時に「もっと作品の話をしてください!」って言われることはよくあります。でも、それでも気にせず脱線し続ける。

土屋:でも、実際はどうなんでしょう。見ている人は作品の話を聞きたいんですか?

吉田:そこなんですよ。そんなにおもしろい作品のエピソードがあるなら、もうどこか別の媒体でしてますよ。ボクが独占取材しているんだったら別ですけど、大体の場合はそうじゃないですから、基本「楽しい話のほうがみんな読みますよ」っていう発想です。