SMBC日興証券のチーフ株式ストラテジスト阪上亮太氏(写真)は、2016年を実力勝負の年と指摘する。

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 SMBC日興証券のチーフ株式ストラテジスト阪上亮太氏(写真)は、2016年を実力勝負の年と指摘する。15年までは日銀による金融緩和、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革、法人税減税、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)などの政策がテーマになって相場を主導してきたが、16年はこれらを材料にした動きが一巡する。また、新興国等の景気減速で「低加速度時代」になるとした。

――日経平均株価の高値と安値、その時期は?

 16年の株価は前半安、後半高になると予想している。日経平均の高値は2万2000円、安値は1万8500円程度。日本企業は着実に力を付けており増益は可能で株価の上昇余地もあるが、16年に大幅な上昇は見込んでいない。

 まず、16年の企業業績は8.8%増益を予想している。この想定される増益率から計算した日経平均の2016年末値が2万2000円だ。米国の景気回復、国内の賃金上昇の加速、消費税率引き上げ前の駆け込み需要といった材料が業績をけん引するだろう。今期の企業業績は18%程度の増益を見込んでいるが、このうちの3分の2程度は円安や原油安、法人税率の引き下げといった外部要因で、実力ベースでは6%の増益。ここから見ればやや加速することになる。

 増益率が大きくない場合、5月の本決算で企業側は弱い業績予想を開示してくる可能性が高い。我々のベースで8%程度の増益予想だと、企業側は微増益もしくは減益を示す恐れもある。市場が会社側の弱気なガイダンスを懸念することで年前半は上値を追いにくい。

――業績の底上げ要因になる円安や原油安などの影響は?

 円安は進みにくいと考えている。ここ1年強でドルは実効ベースで25%のドル高・円安が進んでおり、FRBの利上げを先々まで織り込んでいるとみている。むしろ利上げペースが緩慢と見られやすい中ではいったんドル安が進む可能性もあり、上期のドル・円は115-120円を想定している。コモディティの価格についても、ドル高が進まないことを考慮すればこれ以上大きく下げるとは考えにくく、むしろ多少の反発が予想される。

 こうした背景から本決算後の企業ガイダンスが出そろう5月ごろに日経平均株価は1万8500円程度までの調整があり得る。

 ただ、会社側の示した見通しで市場の目線が低くなったところから第1四半期、第2四半期での業績上振れ期待が高まれば、次第に買いが優勢になっていくだろう。後半になってFRBが利上げを進め、また米国の景気が好調を維持していれば利上げの加速期待も高まり、ドル高方向へ振れやすい。日経平均は中間決算前後に2万2500円を付ける場面がありそうだ。

 それでも後半のドル・円は120-125円と、今年のドル高値の水準を超えるのは難しいと想定している。また、市場は中間期の決算が発表されるころに翌期の業績を意識し始める。17年4月に控える消費税率引き上げの影響が懸念材料となり、年末にかけてはやや上値が重い展開となりそうだ。

――注目されるセクターは?

 年前半はマーケット全般が弱含みで円安にもなりにくいため、内需株の物色が中心になってくるだろう。賃金上昇も内需株の支援材料になる。内需株といってもここ数年で大きく買われているものが目立ってきたため、その中でもバリュエーションの低い小売業、サービス業、陸運業、情報・通信業などが注目だ。

 後半になると外需株にシフトしていく。円安になりやすいほか、米国の景気回復も追い風だ。この米国経済を言えば、足元ではドル高と原油安が響いて外需系の企業やエネルギー関連企業の業績悪化が目立っているが、ドル高やコモディティ安が一巡するようなら米国の景気も回復が見込めるだろう。これが米国景気の恩恵を受ける外需株へ資金がシフトする要因のひとつだ。