紅葉狩り」という言葉がありますが、なぜ「狩り」なんだろうと疑問に思っている人も多いのではないでしょうか? もともと「狩り」とは狩猟のことを指しますが、平安時代に入り、狩猟を行わない貴族たちが現れ、自然を愛でることを「狩り」と呼んだといわれています。
平安時代から紅葉の美しさを楽しんできたいにしえの人々。
古都・京都には、歴史上の人物たちゆかりの紅葉スポットが多く残されています。
── 真紅の紅葉と歴史に触れられる京都の名所をご紹介します。

息をのむほどの紅葉美と、静謐な佇まいをみせる「醍醐寺」弁天堂の紅葉


紫式部『源氏物語』に現れる「下鴨神社」

下鴨神社は『源氏物語』にも登場する「賀茂祭」(後の「葵祭」)の舞台となる場所。上賀茂神社とならび、紫式部ゆかりの場所でもあります。
そんな下鴨神社には「糺(ただす)の森」と呼ばれる、知る人ぞ知る紅葉スポットがあるのです。
ちなみに「糺の森」には「偽りを正す」という、神聖なる意味が込められています。
『源氏物語』の中で源氏が須磨に流される際、
〈憂き世をば 今ぞ別るる とどまらむ 名をば糺の神にまかせて〉
(辛い世の中を今は離れるけれど、後に残る噂の是非は糺の神に委ねよう)
と糺の森について詠んだ歌があります。
紫式部以外にも多くの歌人が糺の森にまつわる歌を詠んでいたほど、神秘の森として愛されてきました。
知る人ぞ知る平安から伝わるパワースポットであり、京都らしい真っ赤な紅葉が魅力の下鴨神社。
さらに今年は21年に一度の式年遷宮を終了したばかり。下鴨神社を訪れるなら今がチャンスです。

「下鴨神社」の鳥居にかかる紅葉

「下鴨神社」の鳥居にかかる紅葉


豊臣秀吉の夢だった「醍醐寺」での紅葉狩り

醍醐寺といえば、豊臣秀吉が行った「醍醐の花見」で有名な場所。
派手好きで華美な装飾を好んだと伝えられる秀吉は、花見のために700本もの桜の木を植え、三宝院の建物と庭園を造ったほど。約1300人が参加したという歴史的な花見として、いまに語り継がれてきました。
そんな醍醐の花見の後に、秀吉が楽しみにしていたのが「醍醐の紅葉狩り」だったのです。
しかし、秀吉は醍醐の紅葉狩りの夢を果たすことなく、その年の夏に62歳で生涯の幕を閉じました。
醍醐寺といえば、弁天堂の水面に映える紅葉が象徴的。きっと秀吉の脳裏には、紅葉の時季の美しい醍醐寺の映像が広がっていたことでしょう。


菅原道真を祀る学問の神様「北野天満宮」は今年注目のスポット

学問の神様と呼ばれる菅原道真が祀られ、梅の名所として有名な「北野天満宮」。実はここ、隠れた紅葉の名所でもあるのです。
ときは1951年。秀吉が水防のために築いた土塁「御土居」のもみじ苑には、なんと250本の鮮やかな紅葉が広がります。ここにも、美意識においてひとかどの人物であった秀吉が深くかかわっていたのですね。
菅原道真といえば、『古今和歌集』のなかにこんな歌があります。
〈このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに〉
(今度の旅は急なことで道祖神に捧げる幣も用意できませんでした。手向山の紅葉を捧げるので神様お受け取りください)
秀吉同様に、道真も紅葉の美しさをしっかり感じていたようですね。
── 「そうだ 京都、行こう。」……JR東海の今年のテレビCMにも登場している北野天満宮の紅葉
11月14日〜12月6日はライトアップも開催。昼から夜まで楽しむことができる注目スポットです。

ライトアップも美しい「北野天満宮」

ライトアップも美しい「北野天満宮」