アニメの世界に入りたいという願望



――舞台『K』の魅力のひとつに、ビジュアルや声の再現性の高さがあると思います。

荒牧 原作がある以上、キャラに似ていることは大事な要素だと考えてます。ただ、演じる側がそこだけに意識を取られてもいけないな、と思うんです。アニメのコピーでは、人間が演じる意味がなくなってしまうから。
松田 初演のときは、舞台『K』の世界に入り込んでもらうために、アニメと同じビジュアルを再現することからスタートしました。でも第二章では、物語を僕らキャストが自分の中で消化したあとにビジュアルの再現性を高めるというように、アプローチの仕方を逆転させてます。

――それは、どういった理由からですか?

松田 今回演じるのはTVアニメ第1期の7話から13話までで、激しい感情のうねりもあれば、激闘もあるんです。なので、キャストがまず感情を自分の感覚で理解しないと、観てくださる方に伝わらないと思って。
荒牧 前作のさらなる上を目指すためということで、演出の末満(健一)さんも含め、みんなで話し合ったんだよね。

――そのあたりのバランスが2.5次元舞台ならではの難しさなんでしょうか?

荒牧 原作ものの舞台というのは、あらかじめファンの方たちに台本が配られている状態なんですよね。作品の世界観、キャラの性格やキャラ同士の関係性も、ファンの方はすごく理解しているし、愛してくださっている。
松田 その人たちの期待以上のものを見せようとすると、おのずとハードルは高くなるという(笑)。
荒牧 やるからには「そっくり」じゃなく、「まんま」を目指したいからね。



――「そっくり」と「まんま」の差というのは?

荒牧 アニメに描かれていない場面を演じたときに、お客さんに「あのキャラはマッキーがやっていた動きとか、しゃべり方とか、日常的にしてるんだと思いました」って言ってもらえるのがベストかなと。
松田 それ、すごく大事だね。

――なるほど。では、2.5次元舞台ならではの楽しさとは、どんな部分なんでしょう?

松田 ひとつには、今言ったような難しさを克服できたときの達成感ですね。
荒牧 ものすごく大きいものがあるよね。
松田 それと、これは誰もが感じたことがあると思うんですけど、アニメやマンガの世界に入りこみたいっていう願望、あるじゃないですか? それが2.5次元舞台では叶う。これって夢のような話だと思うんです。
荒牧 ホントそうだよね! それこそ僕は高校時代はテニス部だったから、『テニスの王子様』に出てくるワザとか真似してやってたもん(笑)。

――となると、ミュージカル『テニスの王子様』に出演されたときは…

荒牧 めちゃめちゃうれしかったです!(笑) 部活で「できないなあ」「マンガみたいにいくわけないか」とか言っていたワザを、舞台の上で実現できたのもそうだし、自分が読んでたマンガの登場人物になれるってことにもワクワクしたし。
松田 めっちゃ楽しいだろうなー。
荒牧 小さい頃から『週刊少年ジャンプ』は毎週買ってたし、単行本もいろいろ集めてたので、家にあるマンガの量、すごいですよ(笑)。本棚2コ分と、入りきらなかったのが押し入れにもあったり。
松田 僕も昔からマンガは好きです。バスケ部だったので『スラムダンク』とか、『NARUTO』も読んでたなあ。でも一番のお気に入りは『ドラゴンボール』。うちの父がベジータそっくりなんですよ(笑)。
荒牧 顔が?(笑) 生き方がってこと?
松田 顔、身長、性格、全部がそっくり(笑)。まわりの友達からも「似てる」って、よく言われてた。あと、マンガで初めて泣いたのが『ドラゴンボール』だったんだよね。ベジータがトランクスと悟天を抱えて、自分で爆発するシーン。…って、マンガの話になると止まらなくなっちゃうな(笑)。