武蔵越生vs飯能南
清水陸(飯能南)
勝負は初回だった。武蔵越生は1回裏、1番法師が死球で出塁。すかさず法師は盗塁を決めて、チャンスを作る。2番山上は三振に倒れたが、3番高木も死球で出塁し、一死一、二塁のチャンスを作ると、4番高橋 豪(2年)が内角に入ったスライダーを思い切り引っ張る。打球はぐんぐん伸びて、ライトスタンドへ飛び込む3ランホームランとなり、武蔵越生が先制に成功した。高橋豪にとってこれが練習試合・公式戦通じて初のホームラン。「立ち上がりが不安な相手投手をいかに突けるかがこの試合のテーマでした。しっかりと先制点を取ることができて、うちにとって楽な試合展開になりましたね」と武蔵越生の小島監督が振り返るように武蔵越生のペースで試合が進んでいった。
投げてはエース左腕の浅見 侑星(3年)が好投。164センチ63キロと小柄な左腕だが総合力が高い投手であった。速球は常時125キロ前後(最速128キロ)だが、球速表示以上と感じさせるキレ味鋭いストレート。さらに内角、外角の際どいところへ強いボールを投げられるコントロールの良さ。スライダー、カーブも低めに投げ分け、甘い球が少ない。またワインドアップから始動し、下半身主導で動くフォームなので、体が突っ込まず開きも小さく、打者から相当見難いフォーム。また徹底的に練習を行ったという軽快なフィールディングで難しい打球を処理したり、巧みな牽制で一塁走者をアウトにさせるなど、隙の無い投球を見せていた。
サヨナラ安打を放った高橋豪(武蔵越生)
そして打線も、5回裏に一死満塁のチャンスを作り、6番齋藤の押し出し死球、7番橋本の適時打で2点を追加すると、8回裏には、二死三塁から2番山上が左中間を破る適時三塁打を放ち、6対0に。続く3番高木が四球を選び二死一、三塁とし、3ラン本塁打を放った高橋 豪を打席に迎えた。高橋 豪は狙いを絞っていた直球を振りぬき、今度は左中間を破る長打。武蔵越生が8回コールド勝ちで代表決定戦進出を決めた。
この日4打点の高橋 豪は大会前に調子を落としてしまい、背番号9から20としてベンチ入り。今日は不調を脱する一打であった。思い切りの良い打撃姿勢と長打力が魅力の左打者。今後も注目を浴びる存在になるだろう。
次は聖望学園と対戦するが、武蔵越生の小島監督は「うちは挑戦者として聖望学園さんにぶつかっていきたいと思います」と意気込みを語った。武蔵越生打線が攻略した飯能南の先発・清水 陸は右上手から130キロ前後の速球、キレのあるスライダーを投げ分ける好投手。その投手から7得点を奪った攻撃力に加え、速球のキレ、変化球のコントロールに優れたエース浅見と戦力的には十分に聖望学園に対抗できるだろう。
聖望学園に一泡吹かせる戦いを見せてくれるのか。1点を争う好勝負を期待したい。
(文=河嶋 宗一)