冬に鍛えた強打を発揮!狭山ヶ丘が7回コールド勝ち!

中野拓(狭山ヶ丘)

 昨夏の埼玉大会ではベスト8も、秋では川越東に0対7で敗れた狭山ヶ丘。この負けから、春には「打ち勝つチーム」になろうと冬場は徹底的に振り込み、ウエイトトレーニング、走り込みを行ってきた。その成果が十分に出た試合であった。

 1番増島がいきなり右中間を破る二塁打を放ち、チャンスを作ると、一死二塁から3番中野拓(3年)の適時二塁打で1点を先制。4番吉岡大智(3年)が右越え適時二塁打で1点を追加。幸先の良いスタートを切る。さらに3回裏、無死一塁から3番中野が左中間を破る二塁打を放ち1点を追加。続く4番吉岡の一ゴロで三塁に進んだ中野は相手のバッテリーミスで生還し、4対0とする。

 4回表には二死三塁からワイルドピッチで1点を失ったが、4回裏には一死二、三塁から1番増島の犠飛で二塁走者も相手内野手陣の隙をついて生還する。さらに二死一、二塁から4番吉岡の左前適時打で追加点を奪い、4回まで7対1とリードする。

 ここまで猛打爆発の狭山ヶ丘打線。その中心といえるのが、3番中野、4番吉岡、6番林 渓太(3年)の3人だ。その中で中野は最も調子が良く、長打力がある選手。現在の高校通算本塁打は10本だが、そのうち6本が今年に入ってから打ったものである。181センチ82キロと恵まれた体格をした強打者で、懐が深い構えから、手元までギリギリまで引き付けて鋭いスイングから繰り出す打球の速さ、勢いというのは、素晴らしいものがあった。本人も調子が良いと語るように、どの打席もタイミングが合っており、速球、変化球に順応していった。この調子が持続する間は、好投手レベルでも打ち崩していきそうだ。

 そして4番吉岡は昨秋まではレギュラーではなかった。冬に急激に伸びて4番を勝ち取った選手だ。全体的にライナー性の打球が多く、俊足を生かして二塁打、三塁打にする選手。175センチ73キロと上背はそれほど高い選手ではないが、力強い打撃ができる好打者だ。

 昨年からレギュラーで主将を務める林はパワフルな打撃が自慢で、その打球の速さは6番打者とは思えないほど。また視野の広さがあり、ナインに対し的確な指示を出しており、攻守ともにチームを引っ張る存在だ。捕手としてスローイング、ワンバウンド処理がさらにレベルアップすると面白い。

盈進東野バッテリー

 そんな好打者たちがひっぱる狭山ヶ丘。5回裏には、無死一、三塁から8番濱川の遊ゴロの間で1点を追加し、9番藤野は敵失、1番増島は左前安打で一死満塁にした後、2番中井の犠飛で9対1と点差を広げ、6回裏、二死満塁から代打の片岡の適時打を放ち、10対1と点差を広げる。

 7回表、盈進東野は5番大塚の安打、6番村上の四球で無死一、二塁のチャンスを作る。続く7番小関の二ゴロで、一死一、三塁とチャンスを広げると、狭山ヶ丘のバッテリーミスで1点を返す。そして8番黒田の安打で再び一、三塁。9番岡田の犠飛でさらに1点を返し、10対3とするが、反撃はここまで。狭山ヶ丘が10対3で7回コールド勝ちを決めた。

 この試合、狭山ヶ丘の各打者の打撃が目立ったが、もう一つ、目立ったものがあった。それが、狭山ヶ丘が心がけているという「声かけ」だ。試合中、選手たちが「この場面、バントあるよ」「ここに打球が飛ぶよ!」などと先を読んだ的確な声掛けができていたのだ。この日は6チーム見たが、声かけの頻度が最も多かったチームだった。この取り組みについて狭山ヶ丘を率いる山田将之監督は、「今年の選手たちは真面目な子が多く、どうしても1つのことに集中してしまって、周りが見えないことが多い。それを改善しようと視野を広くするために選手たち自ら取り組むようになったようです。」と教えてくれた。主将の林に聞くと、「みんなが周りのことを気を配れるように取り組ませています。それがプレーにも生きています」と説明するように、打撃だけではなく、相手の隙をついて盗塁するなど、走攻守ともに洗練されたチームであった。 また、選手たちが自主的に課題を設定して取り組んでいるのが素晴らしい。一冬越えて大きく伸びた狭山ヶ丘ナインは、この後も、自分たちの野球を展開できるか。注目していきたい。

(文=河嶋 宗一)