強豪対決、駒大高が2度のビッグイニングでまさかのワンサイド

二塁打2本を放った福田君(駒大高)

 一昨年春に悲願の甲子園初出場を果たした安田学園。また、駒大高は99年春に一度甲子園出場を果たしている。そんな実績のある、いわば東京都中堅校レベル以上の対決であり、両校の打撃力と投手力のバランスから見ても4〜5点の争いとなるのではないかと予想された。それだけに、両校ともに序盤はセオリー通りの攻撃を組み立てようとしていた。

 ところが、試合はよもや…という展開となり、ワンサイドゲームとなって、予想だにしなかった5回コールドとなってしまった。

 安田学園は2回、この回先頭の死球で出た4番柿原君を内野ゴロで進めると矢野君が三遊間を破って一三塁。続く伊勢君は初球にスクイズを決めて、先制した。森泉弘監督としては、まずはしっかりと先取点を取って試合の主導権を握りたいというところだったであろう。

 これに対して駒大高は1、2回と先頭打者が安打で出ると、しっかりとバントで送って進めていたが、後続がなく三塁まで進めつつも得点にならなかった。3回も、先頭の2番坂本君が右前打で出ると二盗と四球で無死一二塁となる。初回と同じ形になったが、新井塁監督は今度は福田君に対して「打て」の指示だった。それに応えて、福田君の一打はセンターオーバーの二塁打となり、これで逆転。

「1、2回とせっかく送っても点になりませんでしたから、ここは(4番の)福田だし、思い切って打たせたんですけれども、そこで願ってもない一本が出ました。これで、みんなに勇気を与えてくれました」と、新井監督は福田君の一打を評価した。

 その後、安田学園は舘野君からエースナンバーをつけた島田君にスイッチしたが、いきなり死球でリズムを崩して一死満塁となり、ここで8番の吉澤君が右越二塁打してさらに2点を追加。これでストライクを取りにいけなくなってしまい、さらに連続四球。たまらず森泉監督は早くも3人目の木村君を送り込まざるを得なくなってしまった。

公式戦初登板となった大山君(駒大高)

 結局、この回の駒大高は打者13人で5安打5四死球、9点をもぎ取った。4回にも駒大高は木村君に対して、9番登君のタイムリー打や坂本君、福田君の二塁打などでさらに5点を追加した。

 そして、駒大高は背番号8ながらエース格で馬力のある吉澤君から左腕大山君につないだ。大山君は公式戦初登板だったが、大量点もあってか臆することなく伸び伸びと投げて3者連続三振で締めた。

 試合後、新井監督は、「こっちがビックリしていますね。野球は怖いなぁと思いましたよ。一つ間違えたら、逆のケースだって十分に考えられますからね。むしろ、これから引き締めていかないといけないでしょう」と、大量点差のコールド勝ちにも慎重だった。

 安田学園の森泉監督は、「結局、投手のコントロールが悪いということがすべてだったということでしょう。自信がないから、却って打たせていくことが出来ないで力づくで行こうとして、追い込んでいってからも打たれてしまうんですよ」と、投手陣が変化球の制球が定まらなかったことで、大量失点をしてしまったことを嘆いた。

 それにしても、初回の攻防からはこんなスコアは予想出来なかった。ちょっとしたことから、思わぬ展開の試合となってしまい、改めて高校野球は、どうなっていくのか一寸先がわからないということを思い知らされた試合でもあった。

(文=手束 仁)