早大学院vs郁文館
初回の同点打と4回にライトへソロアーチを放った太田君(早大学院)
球場周辺の桜は満開になっているものの、この日は気温が低く、三月上旬並みだということで、いくらか試合開始のコンディション作りは難しいところでもあろう。そんな状況だから、ということでもないだろうが、お互いが毎回のように塁上を賑わしながらの、いくらか落ち着きのない試合となった。
昨年秋の東京都大会で、甲子園帰りの二松学舎大附と延長15回の末0対1で敗退したものの(試合レポート)、緊迫した投手戦を戦ったことで評価された早大学院。その試合を自信に、ひと冬越えての戦いぶりはどうかと注目されていた。対する郁文館は1回戦で高輪を大差で倒しての進出である。
早大学院はこれが大会初戦ということもあって、少しは入りが硬かったところもあったようだ。そこを郁文館が巧みについて初回、二死走者なしから齋藤英君と宮村君の連続二塁打で先制した。しかし早大学院もその裏、四死球などで二死一二塁として、5番太田君が右前打してすぐさま同点。さらに、続く勝本君が中前打してこれで逆転となる。
2回にも早大学院は久永君、柴田君と下位打線の連打などで走者をためて、一死満塁から3番小菅君が右越二塁打して2者を帰して、なおも一死二三塁。ここで、郁文館の佐々木圭監督はたまらず先発左腕の中村君を外野へ下げて、二番手としてエースナンバーをつけた大島君を送り込んだ。ところが、連続暴投で塁上の走者を2人本塁へ帰してしまい、この回4点。3回には佐々木監督は3人目の山本君を送り込むことになったが、その山本君に対しても、早大学院は4回、太田君がライトへソロアーチを放って加点。
5回にも3盗塁を絡めてチャンスを広げていき、小菅君の左前への2点タイムリーで9対2とした。
早大学院・柴田君
しかし、早大学院の柴田君も、もう一つピリッとしないというか、6回には四球の走者を暴投で帰してしまう。それまでも、大きなカーブがありながらストレートにこだわり続けたというところもあって、得点を許していた。本来、ストレートも強気で打者の内側に攻めてくる投球ができる投手だけに、コースも甘くやや万全ではなかったのかもしれない。
早大学院の木田茂監督も、いくらか不満を露わにしていた。「立ち上がりにストレートを捉えられたんだから、そこで配球を変えていかなくてはいけないところなんですけれどもね、同じパターンでまた打たれていましたからね。こういうところが、ウチのバッテリーの甘いところかなと思いますよ。今日のよくなかったところを反省して、次へつなげていかないと意味がありませんから」と、厳しかった。
木田監督としては、今年のチームは柴田君はじめ、スピードのある嵯峨君とこの日もリリーフした齊藤慶君と投手が揃っているだけに、上位進出を目論んでいる。「ワセダの本家として早稲田実を下したい」という思いも強い。それだけに、「きちんとした試合を見せないといけない」という意識で向っている。そういう意味では、この日の試合は消化不良ともいえるものだったのだ。
「9対2でもいいんですよ、コールドゲームとして勝てる時は、そこできちっと勝っておかないとね…」と、6回に与えた余分な1点にも不満だった。
とはいえ、8回に失策から貰ったチャンスを膨らませて得点。早大学院としてはやや遠まわりをしてのコールドゲームだったが、ある程度の得点力もある。郁文館では、2度までも邪飛で好捕を見せた捕手の石井君の頑張りが光っていた。
(文=手束 仁)