主題歌「あなたに恋をしてみました」chay   ワーナーミュージック・ジャパンから2月18日発売 

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1月19日からはじまった月9「デート〜恋とはどんなものかしら〜」(CX月曜9時〜)は視聴率が14.8%(関東地区 ビデオリサーチ調べ)で今期のドラマの第1話視聴率のトップとなり、月9ブランドの健在を示しました。

勝因は、脚本が「リーガルハイ」の古沢良太、主演が朝ドラ「ごちそうさん」の杏、相手役は「家政婦のミタ」の長谷川博己という縁起の良さそうな面子であることと、これまでの恋愛至上主義ドラマとはおもむきを変え、恋愛力ゼロの男女による、より良い生活を求めるための契約としての結婚を考え実践する物語に興味をもった人が多かったというところでしょうか。

ネタバレなしの大まかな見どころは、第一話試写レビュー
をご覧いただくとして、
特に讃えたいのは、キャラクター造形です。
主人公・依子(杏)は、リケジョと呼ばれることを差別と考えていますが、実際、理数系の思考回路と行動様式をもち、すべてに合理的な、ロボットみたいなしっかり者。逃げる巧を追跡して走ってくるところなんてターミネーター的なドラマかと思いました。
一方の巧(長谷川博己)は母親に経済的に寄生していることを「高等遊民」と都合良く言い換えて、働かずして趣味に生きている甘えた人。
ふたりの設定と、それに従った行動及び彼らの口から出る台詞は、依子の徹底的に数値に置き換えた生活ぶりと同じように1ミリのズレもなく完璧で、それが最初から最後まで息着く間もなく繰り出され、視聴者に精巧な、マッサージ機のような快感を与え続けます。
依子と巧のかみ合わなさも、実に完璧に作り込まれていて、依子が素数だらけのデータにうっとりなるのと同じように、古沢脚本にうっとり。

古沢脚本が小癪な(言葉悪いけど褒めています)ところは、脱恋愛ドラマのようで、実はかなり恋愛ドラマであるということです。
それは、後半、好きじゃないけど結婚したっていいだろうと、依子と巧が意気投合する場面での長台詞の応酬に表れています。ふたりがお互いの本心や弱い部分をさらけ出し、どんどん気持ちが盛り上がっていくところは、肉体的に結ばれるよりも感動的な、ある種のラブシーンとも言えます。
演出は「のだめカンタービレ」も手がけた武内英樹で、のだめと千秋によるラフマニノフのピアノ曲の連弾をふたりの精神的な結びつきの表れとして叙情的に映像化した才能が、「デート」でも大いに発揮されていました。
第1話を武内演出にしたプロデューサーの手腕もさすがです。

ついでに妄想させられたのは、依子が巧に連れてきてもらった店でチーズたっぷりピザを食べるところ。
まわりに聞こえるようにハキハキとてらいなく「生殖能力は正常ですか?」と巧に訊ね、続けざまに「勃起力」「健康な精子」などという単語を発したあと、ピザに食らいつき「濃厚で美味しいです」と言うのは、明らかに別のことを想像させようとしていませんか? このへん「昼顔」を思い出し、まんまと釣られております。

また、ファッション、アイテム、ロケ地などにも気を遣っているところは、元気なフジテレビ時代の復活を見るようで、うれしく思います。
最近、この服。カワイイとか、このロケ地いいなあというミーハーっぽい気分になるドラマが少なかったですが、今回は、杏の着ているクラシカルなコートや付け襟、乗っているバイク、かわいいなあとか、横浜っていいかもなどと思うようになっています。部屋は一見ヘンテコですけど、あの美意識もいいですよねえ。

すべてにおいてきっちり生活している依子は、頭いいけどバカかわいさがあり、好感がもてるのですが、問題は巧です。
長谷川博己が演じているのでなんだか好感をもってしまうものの、冷静に考えたら、母から依子に寄生先を変えようとしているただのダメな人。
いっぱい本や映画から情報を吸収している彼の台詞を思い出してください。
「銀座で棟方志功展やってるね、面白い切り口だなあ」
「うーん、カポーティも侮れないねえ」
「やはり太宰の描く女性像は、母性だよなあ」
「つげ義春はやはり圧倒的だ」
「デジタルリマスターで見るカトリーヌ・ドヌーブは美しいねえ……」
なんだよ、こいつ、浅すぎるだろ! 
なにか言っているようで何も言っていない!
でも、こういう人、けっこういますよね。わかったふりして悦に入ってる人。
古沢良太は意識的に巧をそう書いていると思うのですね。
こういう浅くて甘い男がどう変わるのか、変わらないのか、このドラマ、そこが気になります。

あと気になるのは、巧の部屋。本があんなにあるのに、2階だなんて。1階に書斎となる場はなかったのだろうか。床抜けしないか、本当に心配です。

それから、巧は女性とつきあったことがない奥手に書かれていて、それが二村ヒトシの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』にある、「オタクの男は、モテはじめると簡単にヤリチンになる。」という項目を思い出させ、巧の興味が二次元やら小説、映画などから、恋や結婚というものに移行したら、どんなふうになるのだろうと勝手に想像して楽しめます。
それはたぶん、依子も同じ。ふたりとも、ちょっと興味の角度を変えたら、恋や結婚の達人へと変貌しそうな逸材なのかもしれません。
 
もしかしたら恋愛に対する食わず嫌いな偏見を書き換えてくれそうなドラマ「デート〜恋とはどんなものかしら〜」。1月26日放送の2話は、依子と巧の2回目のデートをするも、巧が結婚のためについていた嘘がバレそうになって・・・どうする巧? (木俣冬)