【新党結成】アントニオ猪木は政界再編の台風の目になるか
1月7日、アントニオ猪木参議院議員が新党を設立することを発表した。アントニオ猪木は有権者の人気も高く街頭演説では多くのギャラリーを集めるが、人気ばかりではなくプロレスラー時代に築いた縁で政治家に転身してからも太いパイプを活かして、北朝鮮と対等に口がきける数少ない国会議員としても活躍している。永田町では拉致問題の解決にもアントニオ猪木の力は欠かせないと言われている。
アントニオ猪木は、1995年の参議院選挙で落選して以降は政界と距離を置いていた。そんな彼を永田町に再び呼び戻したのが、維新の会の共同代表だった石原慎太郎だ。
“闘魂注入”が毛嫌いされることも2013年の参議院議員選挙で日本維新の会から出馬して国政に復帰したものの、維新の会の共同代表である橋下徹大阪市長とは仲が悪いことは周知の事実として知られていた。週刊誌記者はこう話す。
「2013年の参院選で橋下徹市長は東京にも何度も足を運んでいます。橋下市長の人気は東京でもそれなりに高いのですが、大阪の熱狂ぶりと比べるとやはり差があります。なので、当時は東京での演説では石原慎太郎と一緒に演説することが多かった。猪木さんは石原さんを慕っているので応援演説には駆けつけるのですが、猪木さんが来ると橋下さんは口もきかず目も合わせない。すぐに帰ってしまうのです。どうやら、猪木さんの“闘魂注入”のパフォーマンスがスポ魂っぽくて嫌いみたいです」
橋下市長に毛嫌いされていることもあって、維新と次世代の党が分離すると、アントニオ猪木は次世代の党に移籍。特段、考え方が次世代にマッチしていたわけではない。敬慕していた石原慎太郎がいたから次世代に入党したに過ぎない。だから、石原が引退を表明した選挙戦は投開票前に離党している。
「橋下さんは中央政界の進出を急ぐあまりに、江田憲司と手を組んだ。江田さんと石原さんは政治思想が相容れない。これで石原さんが橋下さんから離れてしまった。なんだかんだ言っても石原さんはスターですからね。江田さんは政策には明るいし、地盤も強固でも選挙は負けません。しかし、党の顔としては一般的知名度が低く、華がない。石原さんを失ったことが、維新にとっては大きなマイナスだったと思います」(大手新聞紙記者)
石原は引退こそしたものの、いまだ隠然たる力を持つ。アントニオ猪木は委員会で質問に立ったとき冒頭で「元気ですかー」と絶叫して委員長から注意を受け、政府が許可しないのに北朝鮮に渡航するなど、政治家としては決して行儀がいいわけではない。
やんちゃ坊主なのに、石原をはじめ永田町の長老議員から可愛がられているという不思議な魅力を持つ。今回、旧みんなの党の参議院議員4人と新党「日本を元気にする会」を立ち上げたが、アントニオ猪木が参加したのは不思議なカリスマ性のなせる業だろう。
新党は昨年中に宣誓書と承諾書をまとめていたことから、約1億2000万円の政党助成金を受け取ることに成功した。これらは山本太郎議員を引き入れた小沢一郎議員の手法と重なる。今後の風向き次第では、アントニオ猪木が政界再編の軸になる可能性が高まっている。
現在、民主党代表選がおこなわれている。民主党は自民党一強に歯止めをかけるべく、再建を進めている。代表選立候補者の中には政界再編を目論んでいる議員もいる。民主党以外にも橋下市長、小沢一郎議員などが政界再編を叫んでいるが、党派性や政治思想の違いを考えると実現性は乏しい。
もし政界再編に大きく動き出すとしたら、アントニオ猪木が台風の目になるかもしれない。
(文/小川裕夫)