ガスにも電力に匹敵する利権がある!?(写真はイメージです)

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 2015年はエネルギー自由化が大きく前進する年となる。東京電力、中部電力など10の電力会社があるが、それらの電力を効率よく融通し合う広域系統運用機関が今年中に設立され、2016年からは電力の小売りが全面自由化になる。

 そして、早ければ2018年にも電力料金の規制が撤廃される見通しだ。このエネルギー自由化は電力に限った話ではなく、都市ガスにも及んでいる。経済産業省では2013年11月に「ガスシステム改革小委員会」を立ち上げ、識者による自由化に向けた討議を重ねてきた。経産省としては「今年の通常国会に関連法案を提出し、2017年からの小売りの自由化を実現させたい」(同省幹部)という。

「法的分離」を大阪ガス社長が猛反発した本当の理由

 しかし、そこで一番のネックになっているのが、ガスを供給する「導管」の扱いだ。電力の場合、公正な競争を促すために、持ち株会社の下に発電事業会社と送電事業会社をぶら下げる「法的分離」の方向へ進むことが既に決まっている。都市ガスも同様に、導管事業会社、小売り会社といった法的分離への移行案が示されたのだが、日本ガス協会の会長でもある大阪ガスの尾崎裕社長が「意味がないし、必要ない」と発言するなど猛反発の姿勢を見せているのだ。

 確かに自分たちが営々と構築してきた導管のネットワークを開放して、新規参入者に使いやすくすることに抵抗感を覚えることは心情的にも理解できる。しかし、どうして頑なに拒否するのか。ある業界関係者は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの都市ガス大手3社と経産省との“密約説”の存在を指摘する。先の小委員会の設置に当たって、「法的分離までは踏み込まない」という事前の密約があったというのだ。ところがいざ蓋を開けてみると、経産省サイドは手のひらを返したかのように法的分離を打ち出してきた。それだけに「こんなはずではなかった」と大手3社は身をこわばらせているのだという。

 また、「総括原価方式」で決まっている都市ガス料金のシステムに注目する向きもある。原料である液化天然ガス(LNG)の購入費、それを備蓄するタンクの建設費やオペレーション費などトータルの経費を計算し、そこに「適正利益」を上乗せしてガス料金を決めるのが総括原価方式だ。

 実は、そこには導管の建設コストも含まれる。「いままでは安全を錦の御旗に法外なコストをかけて建設をしてきた。通常の水準よりも2割増し、3割増しは当たり前の世界。その結果、高いガス料金を設定できて各都市ガス会社は潤ってきた。法的分離で透明性が求められることが嫌なのだろう」と別の業界関係者はいう。

 引っ越しをすれば、黙っていてもそこに引かれている都市ガスを使うことになる。都市ガス会社とすれば販売の努力なしに売上げが立つわけだ。それだけに都市ガス会社は小売り部門よりも、この導管部門に多くの人員を割いてきた。法的分離に伴う透明性の強化で、法外な建設コストがかけられないようになると、その人員を食べさせていくことができなることも考えられる。そうしたことも都市ガス会社が拒否する理由の一つなのだろう。しかし、法的分離に向けた外堀は着実に埋められつつあるのだ。

(取材・文/松本周二 Photo by rok1966 via Flickr)