サッカー日本代表も間違いだらけ? 徳大寺有恒さん逝く
テレビ番組や雑誌の企画名に、どれだけパクられたりパロディにされたことか。1976年に「間違いだらけのクルマ選び」(草思社)で、衝撃的にデビュー。歯に衣を着せぬ評論で日本の自動車ジャーナリズムを変革した徳大寺有恒さんが、11月7日に亡くなった。享年74。
人は自分の選択に意外と自信がないもの。「あなたの選択は、いろんな仕掛けにダマされている。本当の価値はここにある」……この深層心理を的確に捉えたタイトルと内容で毎年(注1)、ベストセラーを連発してきた。ご冥福を祈りたい。
そこで改めて「間違いだらけの〇〇選び」について考えてみたい。例えば「間違いだらけの政党選び」。以前も触れたが、筆者の部下の投票行動が衝撃的だ。小泉首相時代は自民党の郵政民営化に熱狂し、数年後には全く正反対の政策を掲げた民主党を応援。そして今は、橋下市長と維新の会を支持している。要するに、時々にメディアが盛り上げている人間に、無思考で乗っかっていく。混じりっ気なし純度100%の典型的B層(注2)なのだ。
徳大寺さんは、それまで大手メーカーに気を使った記事しか無かった日本の自動車評論に、厳しい眼を持ち込んだ。にわかに解散風が吹き始めた昨今だからこそ、B層諸君は、他国ばかりに気を使うメディアが持ち上げる政党にダマされないようにして欲しい。
サッカー日本代表を悩ます「間違いだらけの監督選び」そして、ホンジュラス戦を終え、次はオーストラリア戦を闘うサッカー日本代表は「間違いだらけの監督選び」だ。といっても、合宿中に私用帰国して袋叩きにあっているアギーレ監督批判ではない。ワールドカップ(W杯)ブラジル大会惨敗の検証もなく、責任の所在を曖昧にしたままの日本サッカー協会のことだ。敗因を徹底的に分析し、「日本代表に何が足りなかったか?」を炙り出す。そこで初めて次に目指すべきサッカースタイルを設定し、ふさわしい監督選びを始めるべき。ところがザッケローニ選出の責任者である原博実・前技術委員長は、責任を取るどころか専務理事に出世してしまった。これではアギーレ監督の行動など責められない。
徳大寺さんは、長く乗ってもらうことより、短いサイクルの買い替えを狙った当時の国産自動車メーカーの戦略を、「見せかけだけの新しさ」と叱った。まさに日本サッカー協会が、惨敗をごまかす時の常套手段<早めの新監督発表による心機一転の演出>に似ている。
その姑息を厳しく追及するジャーナリズムが育たない限り、圧倒的多数の日本代表ミーハーによるバカ騒ぎと惨敗と忘却が繰り返されるだけだろう。
しかし、徳大寺さんは「(日本人は歴史上素晴らしいものを作ってきたが)自動車でも日本人がそういうものをつくる日がきっと来ると思います」と希望も語っていた。
アギーレJAPANよ、厳しい目の中でこそ結果を出せ!
(注1)毎年…2006年が最終版。
(注2)B層…無教養ゆえに流される人たち
コンテンツプロデューサー
田中ねぃ
東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。DMMニュースではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ