立命館宇治vs奈良大附

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試合時間を超える中断にも動揺せずエースが1失点完投

1失点完投勝利の山下太雅(立命館宇治)

 前日、雨天中止により順延となっていた近畿大会準決勝、この日も雨に見舞われ奈良大附対立命館宇治の試合は、プレーボールは予定通り朝10時にかかったがゲームセットは14時16分。試合時間を超える2時間12分の中断はあったが、集中力を切らさなかった立命館宇治・山下太雅(2年)が1失点完投勝利を挙げた。

 結果的には見事なピッチングをすることになる山下だが、初回だけは何点取られるのだろうと不安視させる立ち上がりだった。

 奈良大附の1番・加藤和希(1年)にレフトフェンスを直撃するツーベースヒットを打たれると、2番・前田勇大(2年)が三塁方向に転がしたバントがヒットになり、3番・池田陵太(2年)にはストライクが入らず四球で歩かせてしまう。いきなり無死満塁で主軸を迎えるが、併殺打と外野フライに打ち取り最少失点で切り抜けた。

 2回からはノーヒットピッチングを続けるが、打線も奈良大附の先発・坂口 大誠(2年)から得点が奪えない。それでも5回、一死二塁から1番・森田 皓介(1年)が左中間へタイムリーツーベース。

「坂口君はこの前の試合より変化球が多い。中盤は狙おうというのが森田のヒットにつながった」という卯瀧監督の指示が的中しこの回5安打を集中させ3得点。ただこの攻撃中、4回裏から降り始めていた雨がいっそう強くなる。

 そして6回表一死、奈良大附の4番・中谷廉(2年)の打席途中、カウントが2ボールとなったところで激しく降り始め試合が中断された。「レーダーを見ると雨雲はすぐ抜ける。もちろんやる方向で進めましょう」本部席からそんな声が聞こえ、雨が弱まったところで総出でグラウンド整備に取り掛かるが、雨が激しくなり作業は一時中断。マウンドとベース付近には再びブルーシートが敷かれた。

 中断から1時間以上が経過しグラウンドは内野のほぼ全ての場所で水が浮いていたが再びスポンジで水取りを行う。「13時30分から試合を再開する予定です」というアナウンスが流れたが、13時20分に雨脚がまたしても強くなり3度目のブルーシートが登場。幸いそれ以上は強くならず、予定通り13時30分に試合は再開された。

奈良大附2番手・中山怜央

 2時間を超える中断があっても立命館宇治の山下は続投。監督からもチームメイトからも信頼が厚くキャプテンの奈良 祥平(2年)は「全員が山下で行くと思っていた」と話した。

 ある意味通常の立ち上がりよりも難しい場面、しかも2点のリードがあるとは言え、試合の流れは完全に止まって打席には4番、カウントは2ボールと投手が圧倒的に不利な状況から始まる。「2ボールだったので、ストレートが甘く行くと長打になります。山下にはフォアボールなってもいいから丁寧に行きなさいと言いました。・・・本当になりましたけど(笑)」試合後、卯瀧監督が話したように山下は中谷に対し2球ボールが続き歩かせてしまうが後続を断ち相手に流れを渡さない。

 一方の奈良大附は6回のマウンドに坂口に代えて中山怜央(2年)を送る。中山は力のあるストレートが武器の右の本格派。純粋な威力だけならエース・坂口を上回る。

 6、7回の2イニングは無失点に抑えるがどちらもフォアボール絡みで二死満塁のピンチを招く。3イニング目となった8回にタイムリーツーベースを打たれ1点を失うが、生還したランナーはデッドボールによって出塁させたものだった。打者16人に投げて与四死球が5。長所も短所もよく現れた71球だった。

 8回途中に3番手としてカーブが武器の技巧派左腕・欅谷智也(2年)がマウンドに上がると立命館宇治の盗塁失敗に助けられチェンジ。攻撃につなげたいところだったが9回も三者凡退で試合終了。

「自分のピッチングが出来ました。変化球で打たせて取るピッチングを出来たので良かったと思います。中断した時、心配かなと思ってたのですが切り替えて行くことができた」と1失点完投勝利を振り返った立命館宇治の山下。この日与えた6四球を減らせれば近畿王者が近づくはずだ。決勝に向けては「(フォアボールを)0にしたい」と目標を口にした。

 球場使用の関係で決勝戦は3日ではなく1日空けて4日に行われる。エースを万全な状態で投げさせられるが卯瀧監督は「次も決勝ということよりもまた公式戦やらせてもらえる」と物腰の柔らかいいつもの卯瀧節で話していた。

(文:小中 翔太)