宇部鴻城vs岡山理大附

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夏に味わった経験を生かす時がキタ!

決勝弾の岡田克樹(宇部鴻城)

 延長11回表、宇部鴻城は4番岡田克樹(2年)からの攻撃だった。試合後半から強く吹いていた風が、この時には少しだけ弱くなった。「狙いました」と心境を明かした岡田。

 対する岡山理大附のエース・西山雅貴(2年)は、10回まで159球を投じている。少しずつボールが浮きはじめていた。1ボールから岡田が空振りした球は、明らかに高くなっている。岡田がボールを捕えさえすれば、長打になる可能性が徐々に高まっていった。

 そして2ボール2ストライクからの6球目、西山はカーブを投げた瞬間、「失投」だと感じた。岡田のバットが捕える。「打った瞬間に行けー」と走りながら思ったという打球は、レフトスタンドへと吸い込まれていった。それまでの4打席で打てていなかっただけに、強い気持ちで打った一発。尾崎公彦監督も、「良く打った」と讃えた。

 これが決勝点となり、「自分の一発でチームが勝てて嬉しい」と、165センチ75キロの4番打者は満面の笑みで場内にも流されたインタビューに応えた。

宇部鴻城のキャッチャー・町田尚平

 ゲームは岡山理大附の西山と、宇部鴻城の上西嵐満(2年)が投手戦を演じた。共に準決勝からの連投だが、宇部鴻城の上西は「準決勝の時よりも球は走っていました」と調子を話す。それだけに、両チームとも得点を奪うのには苦労した。

 4回、宇部鴻城は岡山理大附の西山から四つの四死球をもらい、ノーヒットで先取点を挙げた。

 7回裏、岡山理大附は先頭の6番古賀友耀(2年)が仕掛けセーフティバントをピッチャーの上西が一塁へ悪送球。続く7番徳田夕希也(2年)の打席で、早川宜広監督はヒットエンドランを仕掛けて成功させる。そして8番藤井勇吾(2年)がレフトへポテンヒットを放って1点を返した。

 ただ、無死一、二塁と勝ち越されるピンチだったマウンドの上西が、9番西山のバントを三塁へ投じ、犠打を失敗させる。動き出していたゲームはここで再び止まり、また投手戦の流れへと戻っていった。

 延長に入り、再びゲームが動き出す気配を見せる。

 10回表、二本のヒットで二死二、三塁のチャンスを作った宇部鴻城。だが、3番梅本大輝(2年)がファーストゴロに倒れ、岡山理大附の西山がこの局面を乗り切った。

 勝負の大きなポイントになったのは次の10回裏での出来事だ。 岡山理大附は先頭の1番石原吉人(2年)がライトへヒットを放つ。1点が入ればサヨナラ勝ちにできるだけに、2番宗光康作(1年)がどのようにして走者を進めるかが大事だった。

 しかし、そう考えていなかったのが宇部鴻城のキャッチャー・町田尚平(2年)。上西が宗光に投じた1球目の後、町田は一塁へ牽制を投げて石原をタッチアウトにした。

 「夏の山口大会準決勝で岩国高校さんとやった時、(宇部鴻城が)バントをしようとしてキャッチャーからの牽制で刺されたことがあった。自分はベンチで見ていたのですが、ビデオでもう一度見てそういうことを学んだ」と、打者の宗光よりも走者の石原の動きに目を光らせていたことを明かした町田。先頭にヒットという形でサヨナラの走者を出してしまっただけに、流れを引き戻す町田のファインプレーと言えるだろう。

 「中国大会優勝が目標だった」と新チーム結成時の決意を果たしたことを讃えた尾崎監督。三塁ランナーコーチを務める主将の巻幡拓磨(2年)も、「今大会では粘りの野球ができた」とチームの成長を感じている。

 次は2週間後の明治神宮大会。「全国の強いチームと対戦できるのが楽しみ」と多くの選手が話したように、さらにチームの成長に繋げられるチャンスの場である。