糸満vs神村学園
サヨナラのホームを踏んだのは、糸満・太田貴斗
3対3で突入した延長戦。先にチャンスを作ったのは10回裏の糸満だった。一死から5番太田貴斗(2年)が二塁打を放つ。続く6番金城旭貞(2年)は三振に倒れ二死二塁。打席には7回途中からリリーフしていた安谷屋正貴(2年)が立った。
守る神村学園の外野陣は少し深めの守備隊形。二塁走者の太田は、「近く(守りが浅く)ても還る気持ちだった」が、この守備を見てヒットならば得点できると確信していた。
打席の安谷屋がファウルで粘る。何度か外野方向にも飛んだが、神村学園の守備隊形は変わらない。フルカウントからの7球目、「真ん中低めのストレートでした」と安谷屋のバットが反応した。打球はレフトのフェアーゾーンへ上がる。ヒットになることは確信した安谷屋だったが、「(太田が)ホームまで還ってこられるかどうかは微妙だった」とサヨナラ打になるまでの自信はなかった。しかし、太田は迷うことなく本塁を目指す。神村学園のレフト・田中梅理(2年)は好返球で本塁はクロスプレー。追いタッチになり、太田の足が先にベースに触れた。高らかに右手を突き上げた太田。そして打った安谷屋が戻ってくると、ナインは次々に抱きついた。
「自分が打たれて逆転されたので、絶対決めようと思っていました」と喜びを表現した安谷屋。逆に神村学園の守備陣はガックリと肩を落とした。外野手のやや深めの守備位置、最初から本塁に突入する気持ちだった太田の狙い、そして安谷屋の気持ちが、最後のサヨナラ劇のポイントとなった。
糸満。池間誉人主将の好判断
この試合でもう一つのポイントとなったのが7回表の糸満の守り。エースの金城乃亜(2年)は6回まで1安打ピッチング。それが7回の先頭・5番松元 健太(2年)にヒットを打たれた。
糸満の上原忠監督は、このタイミングで左腕の安谷屋へのスイッチを決断する。「今日は途中で代えるぞと選手には言ってました。金城が疲れていたのと、安谷屋の調子が良かった」と継投の理由を話した指揮官。
リリーフする安谷屋はマウンドに上がる心づもりはしていたが、交代のタイミングまでは読み切れていなかった。少し力みが見られ、最初の打者である6番豊田 翔吾(2年)に四球を与えてしまう。続く7番児玉 和也(2年)の送りバントで、一死二、三塁と一打同点のピンチになった。
打順は8番で相手エースの北庄司 恭兵(2年)。差は2点あったが、守る糸満の内野陣、特に二遊間は1点も与えない覚悟の前進守備をとった。 1ストライクからの2球目を打ち返した北庄司の打球は高く弾んでショートに飛ぶ。処理をする主将の池間 誉人(2年)はバウンドの高さに、本塁に投げても間に合わないと感じた。次に考えたのは、一つのアウトを一塁と三塁のどちらに投げて取るか。前進守備を敷いていたため、二塁走者は池間の後ろを走る形になるが、「ランナーのスタートが遅かった」と気付き、三塁への送球を選択。走者の豊田はタッチアウトになった。
1点は与えたものの、二死一塁と二死三塁では雲泥の差。気持ちの部分で「楽になった」とマウンドの安谷屋が話した通り、主将が見せたファインプレーと言えるだろう。
この後、8回表に逆転され、裏に同点に追いつき延長に突入する展開になったが、投手の代わりっぱなであった7回表が1点で終わったということが、この試合の勝負の分かれ目だったように感じる。