中盤に下位打線が爆発したいなべ総合、秋季県大会を初めて制す

攻守にわたり活躍した井上君(いなべ総合)

 下位打線が爆発したいなべ総合学園が、中盤に得点を奪って逆転して突き放した。この夏、三重が選手権大会で準優勝を果たしていることも、大いに意識している尾崎 英也監督。「三重県にいい風が吹いてきていると感じていますから、その風に乗っていきたいです」という思いである。

 今大会で、いなべ総合は4年連続5回目の出場となったのだが、意外にも秋季大会は初優勝である。「経験上、秋は県1位で通過して1勝のアドバンテージは大きいですから」と、尾崎監督も県大会優勝を喜んでいた。

 しかも、今秋は地元開催となるだけに、尾崎監督としても、前任の四日市工時代の2001年以来で、いなべ総合学園としては選抜初出場を目指す。

 試合は海星が3回、四球の走者をバントで進めて、二死二塁から、2番八重田君の中前打で帰して先制した。八重田君は157?と小柄な選手だが、ミートも上手くバットコントロールもいい。この日は3安打しているが中前、右前、左前と打ち分けていた。

 いなべ総合の先発内山 昌高君は、立ち上がりから、もう一つ制球が良くなく3回を投げて3四球。ボールが先行していく場面が多かったので、尾崎監督はスパッと4回からは一塁手の倉田君を、ほとんどぶっつけ本番に近い状態で送り込んだ。井上君の好リードもあって、一死一二塁から三振併殺で逃れると、その裏にいなべ総合の反撃が始まった。

 この回のいなべ総合は、4番川瀬君が四球で出るとバントで二進。二死二塁から、7番井上君が左翼線に二塁打して同点。さらに、太田君の一打は、三塁手の手前で大きく跳ねるいくらか幸運な安打となって、一三塁となる。ここで、清水君への初球が暴投となり、労せずして3走井上君が逆転のホームイン。さらに、清水君が左越二塁打して、太田君を返し、1番に戻って市川君も右前打してこの回4点。

先発・渡邉君(海星)

 5回にも伊藤 将大君の中前打と、バント失策などで好機を作り、二死満塁から井上君が左前へはじき返して、2点対タイムリーとした。

 井上君はこの試合では3打数3安打と気を吐いたが、9番清水君も二塁打2本と、いなべ総合は、7番以降で7安打し5打点を叩き出している。下位打線が爆発したことも、この試合では大きかった。もっとも、井上君は、本来ならば3番においてもいい選手なのだが、加藤 辰輝君が成長してきたので、7番においているという。捕手としての、リード面も含めて、チームの柱と言ってもいい存在だ。

 もっとも、尾崎監督は、「時々、自分のリードに酔うところがあるんですよ。今日なんかも、故障上がりで言ってみれば復活登板になった祝を(三番手として)送り出しているので、そこは持ち味のストレートをいかせてやりたいところなのに、むしろかわすリードしていましたからね」と、厳しいが、それは期待の表れでもあるということだろう。

 いなべ総合は、7回途中からマウンドに登って8番に入っていた祝 大祐君の安打でさらに1点を加えた。

祝君は、代わった直後こそ、4番藤井君に二塁打されて、2点を返されたものの、8回には連続三振を奪うなど、力のあるところを示した。打者の内側にズバッと食い込んでくるストレートは威力がありそうだ。東海大会までは、まだ1カ月近くあるだけに、祝君の復調への時間もあるということが言えよう。

 3回に先制した海星だったが、4回に先発渡邉君が掴まると、森下 晃理監督は左の川崎君から長田君、遊撃手からマウンドに送り込んだ片岡君とつないで何とかしのごうとした。

 初戦で久居を下し、2回戦では夏の甲子園準優勝の三重を下して、勢いづき四日市工には大勝して、準決勝でも津西の伊藤君を攻略して8年ぶりの東海大会進出を決めた海星。この敗戦で見つけた課題を修正して、地元開催の東海地区大会に臨む。

(文=手束 仁)