意思統一の徹底、全員野球で初の4強へ・国分中央

 2、4回と2つの犠牲フライで2点をリードした国分中央だったが、中盤以降は鹿児島情報が流れをつかんだ。

 7回裏、相手の送りバント三塁悪送球と1番・和田佳大(2年)のライト前タイムリーで同点に追いつく。

 国分中央は9回、二死から連打でチャンスを作ると、2番・田島広己(2年)が左中間二塁打を放ち、2点を勝ち越すと、その裏二死満塁と一打サヨナラのピンチを、7回からリリーフしたエース前田準(2年)がしのいで、初の準決勝進出を勝ち取った。

 9回表の国分中央の攻撃には、チームの掲げる「全員野球」が体現されていた。

 2対2の同点で迎えた9回表。二死から9番・前田、1番・堀切風真(3年)が連打でチャンスを作った。7回に同点に追いつかれ、流れが相手に傾いていただけに、土壇場で作った好機は一気にものにしたいところだ。

 下村幸太郎監督は、タイムをとって伝令を送る。打者の2番・田島だけでなく、二走・前田、一走・堀切にも伝令を走らせた。

 特に何か策があったわけではない。ここで一気に勝負を決めるチーム全体の意思を統一することが、この伝令に込められていた。

 田島の頭の中には「遊撃手の頭上を越え、広く開いた左中間に運んで2点勝ち越し」のイメージがすでにあったのだろう。相手バッテリーの配球は外角中心。カウント1ボール1ストライクから外角高めの直球を、軽く合わせる感じでイメージ通り左中間に運び、前田、堀切が生還して勝ち越した。

 試合中、ベンチの控え選手たちは、常に具体的なメッセージを発しているのが目を引いた。

 野手のポジショニングや、ここが勝負どころという場面の確認、リラックスの言葉など、多岐にわたる。ベンチも含めた全員で戦っていることがよく分かる。

 9回裏、二死から満塁にされ一打サヨナラの絶体絶命の場面でも、一、三塁手は長打をされないように塁線よりのポジショニングを怠らなかった。ベンチの選手たちの表情にも悲壮感はなく、チームの勝利に必要な具体的な言葉を発していた。

 出ていない選手も頭の中で戦っているから、七回同点に追いつかれた場面で、ベンチにいたエース前田は「自分に出番が回ってくる」ことがイメージできた。

 こういう野球ができるのは「部員が少なくて、全員が同じ練習をしているから」と下村監督は常々話していた。ベンチ入り20人、マネジャーも含めた部員32人、野球部だけでなく、学校や惜しみなく応援してくれる地元・霧島市も含めた「全員野球」で勝ち取った初の4強だった。

(文=政 純一郎)