「悪い流れ」を引き戻す・大島

 大島は序盤で3点を先取し、主導権に握ったかに思われた。

 4回に1点を返した池田が5回、押し出しと4番・三日市亮太(2年)が満塁から走者一掃の三塁打を放って4点を奪い5対3と逆転に成功した。

 その裏、大島は二死二塁から8番・富 靖宝(3年)のセンター前ヒットがエラーを誘い、1点を返して後半に望みをつなぐ。6回一死二三塁から4番・小野 浩之介(3年)の内野ゴロと5番・川畑 雅樹(3年)のセンター前タイムリーで試合をひっくり返した。中盤は守備のミスもあり、苦しい守りだったが、6回以降リリーフした福永 翔(3年)が力強い投球で相手打線を封じ、苦しい試合をものにした。

 大島は、中盤の「悪い流れ」を後半引き戻した。

 引き戻すきっかけを作ったのは、6回からリリーフした左腕・福永だ。力強い直球に変化球の制球も安定し、点を取られそうな雰囲気を微塵も感じさせなかった。9回まで4イニングを4奪三振、被安打1の好投で期待に応えた。

 4、5回に、エラーが絡んで5点を返され逆転され、重苦しい流れの中で託されたマウンドだったが、福永は動じない。

 ピンチでも「抑えれば自分が目立てる」と前向きな気持ちでいられるのは、甲子園など大舞台を経験したことが大きい。甲子園以降、肩痛でマウンドから遠ざかっていたが「あそこで打たれたからエースを外されたと周りに思われたくない」意地で身体を鍛えた。この1カ月間は、練習中はグラウンドに通じる「大高坂」を何度もダッシュし、練習後は毎日15キロのランニングを課した。一回り成長した姿で、夏のマウンドに帰ってきた。

 復活した左腕の好投に打線も応える。1点差を追いかける6回、4番・小野の内野ゴロで同点に追いつき、5番・川畑が勝ち越しのセンター前タイムリーを放って再び主導権を手繰り寄せた。5回は逆転のきっかけを与えるエラーをしているだけに「一番楽に打てるフォームで、フルスイングを心掛けた」汚名返上の一打だった。

 先に主導権をとりながら、守りのミスが絡んで流れを失ったのは反省すべき点だ。その一方で先発した1年生左腕・渡 秀太やリリーフ福永の好投、県大会初スタメンの坂野 拓海(3年)、富が良い打線のつなぎを見せるなど、収穫もあった。何より悪い流れをチーム全体で引き戻す底力を示せたのは大きな収穫だろう。良いことも、悪いことも含めて、次につながる試合ができたと前向きにとらえ次につなげてもらいたい。

(文=政 純一郎)