松山南vs松山聖陵
昨夏県大会ベスト4、今シーズンも上位レベルの実力を維持する松山聖陵。その根幹にあるのは「丁寧さ」。ただ、その中心にあるべき主将・国吉 翔平(3年・三塁手・右投右打・178センチ60キロ・宮古市立平良中<沖縄>出身)は選手整列の先頭になかった。体調不良による欠場。動揺が一塁側ベンチにあるのは明らかだった。
一方、グラウンドは耐震工事の影響で全く確保できず。時折マドンナスタジアムなどを借りながら頭を使った練習に取り組んできた松山南はその動揺を様々なアプローチで広げにいく。右サイド・青木 孝洸(3年・投手・右投左打・172センチ68キロ・東温市立重信中出身)は、全ての球種がナチュラルにシュートする自らの特長を活かし、三振をまったく「取りに行かない」投球で松山聖陵の強打線に的を絞らせず。いわば「柔」である。
一方、打線は2回表・5安打を集中させ3点を先行。さらに続く3回には先頭打者の3番・中川 友輝(遊撃手)が12球粘って最後は右中間二塁打。彼らは最速145キロ右腕・木村 智彦(3年・右投右打・174センチ68キロ・今治市立北郷中出身)の130キロ台ストレートや抜ける変化球を「剛」の形で狙い打つ。
ただ、松山聖陵はこの3回は追加点を許さず。3回裏には一死二塁から1番・照屋 雄大(2年・右翼手・右投左打・173センチ76キロ・那覇市立城北中<沖縄>出身)の右中間三塁打と2番・近藤 潤弥(3年・二塁手・右投左打・161センチ55キロ・えひめ西リトルシニア出身)の初球スクイズで2点。5回表には二死三塁から近藤が一塁へのセーフティーバントで同点に追い付く。劣勢下にあっても強引に流れを引き戻したこの3点は見事であった。
しかしながら続く6回には一死二・三塁の好機で勝ち越せず。丁寧さのベースとなる「幅」を松山南の「剛柔流」によって徐々に狭められていった松山聖陵の不安は7回表に表出する。そして松山南もその勝機を見逃さなかった。
一死一・三塁から野選と失策で2点を勝ち越すと、今春県大会と見比べても太ももの張り具合が明らかに増した4番・水口 貴仁(3年・左翼手・右投右打・178センチ78キロ・伊予市立伊予中出身)が初球の真ん中外より高めの134キロストレートを叩き中越適時二塁打。二死三塁からは6番・松本 泰樹(3年・中堅手・右投左打・173センチ62キロ・東温市立重信中出身)内角から内に入る難しい120キロスプリットにヘッドを落とし、バットを平行にぶつけるスイングで一塁頭上を破る適時三塁打。重い4点がスコアボードに刻まれた。
さらに9回にも2点を追加した松山南は青木が奪三振「0」で115球完投。故・伊丹 十三さん(俳優・映画監督)や、野志 克仁・松山市長、本田 朋子さん(元フジテレビアナウンサー・現フリーアナウンサー)など文化人に様々な有名人を輩出している松山南は、彼ららしい戦い方で松山聖陵を破る金星を手に入れた。
(文=寺下 友徳)