スコアに反映されなかった忍耐の跡

 2009年大会以来の再戦となった両校の対戦は、地力に優る足立学園が押し切る形で勝利。4年連続4回戦の壁に阻まれているその先を見据え、まずは初戦を勝ち上がった。都立産技高専の初戦突破はまたもおあずけという形になってしまった。

 結果だけみれば大差の試合。しかし、8回までは4対1というスコア。都立産技高専の善戦が光った試合ともいえる。

 善戦の要因は先発のエース・栗本一輝投手(3年)の踏ん張りにあった。

 1回表。足立学園の1番・榎本慶太選手(3年)にいきなり二塁打を打たれ、3番・塚崎智彦選手(3年)の犠牲フライで先制を許す。

 2回表。足立学園の先頭7番・佐藤鴻乃介選手(3年)にヒット&レフトのエラーで3塁まで進まれ、9番・大浜優真選手(3年)の犠牲フライで追加点を許す。

 3回表。足立学園の先頭3番・塚崎選手にレフトオーバーの三塁打を打たれ、続く4番でエースの片倉翔太選手(3年)の犠牲フライで3失点目を喫する。

 いずれも先頭打者を得点圏まで進める苦しい立ち上がり。しかし失点はすべて犠牲フライで、続くピンチにタイムリーを許さず最少失点で切り抜けつづけた。

 最少失点を続けられたのは四球を極力出さなかったことが大きい。足立学園の強力打線を相手にひるまず、6回を投げ切り四球は2。長打を打たれてもフルスイングされても、丁寧にストライクを投げ続けた。

 カウントが悪くなり、足立学園のバッターにバントの構えなどで揺さぶられても動じない。5回表にはワイルドピッチで痛い4点目を失ったが、大崩れには至らない。派手な投球スタイルではないものの、忍耐強く投げ続けたことで大量失点を許さなかった。

 都立産技高専は足立学園の先発・片倉投手の速球に振り負ける展開が続いた。5回まで7三振を喫する。6回から足立学園のマウンドを受け継いだ岡本健投手(3年)にも押し込まれたが、7回裏に先頭の4番・山田夕介選手(2年)が二塁打で出塁すると、2アウト後、7番・藤田天馬選手(3年)がセンターへヒットを放ち1点を返す。この流れは、先発した栗本投手の粘りの賜物といっていい。

 栗本投手同様、2度ダブルプレーを奪うなど要所で粘りの守りをし、なんとか足立学園の圧力に耐えてきた都立産技高専。それだけに、最終回の守備は悔しかった。

 7回からリリーフした中川寛之投手(2年)も四球を出さない粘りのピッチングを継続していた。そしてランナー2塁ながら2アウトまでこぎつける。ここで足立学園のバッター・塚崎選手の打球を、ライトが捕れずに1点を許す。続く片倉選手のセカンドフライも落球しさらに1失点。この後6番・小谷野凌太選手(3年)のタイムリーでこの回3点目を失うと、2アウト1、3塁からファーストへのけん制で飛び出したランナーを挟んだ際、悪送球してしまいホームインを許す。

 最終回に打たれたヒットは1本のみながら4失点。8回まで四球2、エラー2でギリギリ踏ん張ってきたが、この回だけで四球2に3つのミスを集中させてしまった。

 足立学園は先発の片倉投手、2番手の岡本投手、そして8回からリリーフした國兼惇平投手(3年)も質の高いボールを投げられる。さらにどのバッターも力感あるスイングができ、守備も堅いハイレベルなチーム。一方で、打ち気にはやりバットを振り回してしまったことで都立産技高専を助けた部分も見られた。11安打のうち、長打が5本あったが、フライアウトも多かった。

 一発勝負のトーナメント、次戦以降、試合運びのスキを埋めていけばまだまだ強い足立学園の姿が見られそうだ。

(文=伊藤 亮)