大阪桐蔭vs桜宮 一冬の成長と1ヶ月の改善
先制タイムリー二塁打を放った大阪桐蔭3番・香月選手
花園中央公園野球場で行われた桜宮対大阪桐蔭という2回戦屈指の好カードの試合。第1試合にもかかわらず大勢の立ち見客が出るほどの観衆が詰め掛けた。
4季連続で甲子園に出場していた大阪桐蔭だが、昨年の秋季大会4回戦で敗戦したためこの日が7ヶ月ぶりとなる公式戦となった。仕切り直しの一戦に4番を任されたのが正隨。旧チームでもレギュラークラスの選手だったが、右足を骨折した影響で試合に出られない日々が続いていた。
それでも西谷監督は「このチームでは正隨を4番でと思っていた」と信頼を寄せる。キャプテン・中村をトップバッターに据え、経験豊富な峯本、香月の後ろに正隨がどっしりと構える。タレント揃いの大阪桐蔭打線は初回、一死から峯本が内野安打で出塁すると、香月が初球のストレートを見送った後、2球目の変化球を狙い澄ましたかのように叩く。外野手の間を抜けた打球はタイムリーツーベースとなり先制に成功。尚も一死二塁のチャンスに正隨が初球をセンター前に弾き返し、二走・香月が生還。「現時点でのベストオーダー」という布陣が初回につながり2点を先行した。更に3回にも一死一、二塁から8番・福田がライトフェンス直撃の2点タイムリーツーベースを放ち、試合の主導権を握る。
逆に追いかける展開にしたくなかったのが先攻の桜宮。「桐蔭さんと公式戦で当たった時は全て初回に点を取っていたので、先手を取りたかった」とは福原監督。練習試合で好調だったこともあり打線には自信を持っていた。主戦・山本も3月末から球速が140km/hを超え、強豪相手にも堂々としたピッチングを披露。福原監督は投打共に「楽しみにしとった」と大阪桐蔭との試合に臨んでいた。
しかし、初回の攻撃を3人で終えると、2点を追う2回に4番・土井のヒットから一死満塁のチャンスを作るがあと1本が出ない。左打者が半数以上並んだ桜宮打線はその後も大阪桐蔭の先発左腕・田中を攻略出来ず、6回まで散発3安打で2桁三振を喫し無得点に抑えられてしまう。7回に8番・冨嶋のタイムリーで1点を返すが反撃はここまで。8回裏に大阪桐蔭・福田のソロアーチでダメを押され試合の行方は決した。
桜宮・山本投手
実はこの両チームは約1ヶ月前、練習試合解禁となると早々に対戦していた。互いに手の内を隠すことなくベストメンバーでぶつかり、試合内容はホームランが乱れ飛ぶ乱打戦。スコアは14対7と大差で大阪桐蔭が勝利し、この日も先発した桜宮・山本は3回で11点を失っていた。「3月はストレートで押したんですけど、今日は変化球を混ぜて絞りにくくしました」とスタイルを修正。スライダー、チェンジアップ、フォークにカーブと多彩な球種を投げ分け、序盤に4点を失ったものの4〜7回までは強力打線を相手にノーヒットピッチング。「立ち上がりにフォアボールで無駄に出したランナーが点になりましたけど、後半はしっかり投げられました。低めに決まったボールでは打ち取れたんで、高めに浮くボールを無くせれば次は勝てます」と敗戦の中にも1ヶ月でKOから完投へと改善出来た投球内容に手応えを感じていた。
大阪桐蔭は、ここ数年はセンバツに出場していたため3月中旬には試合で100%の力が発揮出来るよう調整していたが、今年に関しては3月いっぱいまで丸々トレーニング。技術練習ももちろんだがランニングとウエイトトレーニングをみっちり行った。スタンドにいた部員は基礎練習の日々を「長かったっす」と振り返り、西谷監督は「久しぶりに練習出来た」と自信をのぞかせる。
3安打3打点と大きく勝利に貢献した2年生・福田は「秋は負けてるんで、春は優勝目指して1つ1つやって行きたいです」と先輩たちの思いを代弁。
敗れた桜宮・福原監督は「一瞬の勝負どころをそつなく出来るようにならないと夏に勝つのは難しい」とバント失敗や2度の牽制死を反省点に挙げ、夏のリベンジを見据えていた。
(文=小中 翔太)