「あれってお前の姉ちゃん?」学校でのからかいで弟は不登校に「人生の答えが出るまで1年半信じて待った」ままるんの愛
小中学校の不登校の児童数は35万人とその数は年々増え続けています。タレントの藤田ニコルさんの母・ままるんも、子どもの不登校に悩んだひとりでした。娘さんの活躍の裏で、息子さんが不登校になった過去があったそうで、「親だからなんとかしてあげたいと思った」と悩んだ日々についてお話を伺いました。
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きょうだいでも違う「人と比べるのは意味がない」
── シングルマザーとしてお子さんたちを育ててきたと伺っています。今はおふたりとも社会人になられていますが、小さい頃は反抗的な態度をとるお子さんたちに、ユニークな方法で向き合ってきたそうですね。
ままるん:思春期になってくると、子どもたちがちょっと悪い言葉を使い始めることがありました。「あいつ」「お前」とかね。でも思春期って、親が何か言ってもそれ以上に言い返してきますよね。だから、親や目上の人に対して使ってはいけない言葉を注意するときは「もうプロレスだ~!」って。もちろん殴るとかはしませんよ。スキンシップと遊びも兼ねて、プロレスごっこをして子どもがギブアップして謝ったらその話はもう終わり。
あとは小さいころから、「うちはうち、よそはよそ」と言ってきました。日本人はやっぱりみんなと同じがいいっていう風潮があると思うけど、みんな一緒だったら、どこで個性って生まれるのかなって。もちろん、学校や社会のルールは守らないとそれはダメよね。これは当たり前。でも、弟が生まれて、きょうだいそれぞれまったく違うと感じてから、人と比べるなんて意味がないって思ったのよね。
姉の活躍の裏で始まった弟の不登校
──「人と比べない」とおっしゃっていましたが、友人たちが学校に通うなか、お子さんが学校に通えていない時期があったそうですね。日本では今、小中学校のクラスに1~3人の割合で不登校のお子さんがいるそうで、現在も悩んでいるご家庭は多いと思います。
ままるん:娘が小学生で雑誌のモデルとしてデビューして、10代後半で売れ始めてテレビに出させてもらうようになりました。その頃、ちょうど弟が中学生で「あれって、お前の姉ちゃん?」と学校でからかわれることが増えていったそうです。
最初のうちは大丈夫だったのですが「恥ずかしい」と言って学校に行かない日がだんだん増えました。でも私は、そんなに長くは続かないだろうと、「1週間くらい休んだら大丈夫かな」と思っていたんです。ところがそれが1か月、2か月と続いて…。友達がたくさんいて、いつもうちには誰かしら来ているような子だったから、まさかうちの子が不登校になるなんて想像もしていませんでした。
私は何事もポジティブにとらえるほうだと思いますが、このときばかりは「なんでこうなっちゃったんだろう」「これからどうしたらいいんだろう」と悩んでいました。
── 学校に行かない息子さんとどう接していたんですか。
ままるん:心配した先生が尋ねてくることもありましたし、友達が迎えに来てくれることもあったのですが、「ごめんね、今日も無理みたい。ありがとうね」と声をかけて。周りからは「引きずってでもいいから連れて行ったほうがいい」とも言われたのですが、私は息子の気持ちを尊重して、無理に連れて行くことはしませんでした。
最終的に1年半、家にいたのですが、今思えばこの間は長く感じましたね。息子は出かけることもなく家にいるだけ。ちょっと不健康かなと思って、たまに旅行に連れ出したり、「一緒にやってみない?」と声をかけて壁のペンキ塗りをしたり。誘えば一緒に出かけたり、何かをしたりする子でした。
期間が長くなるとお姉ちゃんもだんだん心配し始めて。不登校になったきっかけはお姉ちゃんだったかもしれないけど、長期化してくるとこれはお姉ちゃんだけの問題じゃなくなってくると思い、3人で家族会議を開きました。
「この先どうしたいかを選ぶのはあなた」
── 家族会議でどんなことを話したのですか。
ままるん:学校に行かないことで、これから先、どんなことが不便になるかという話をしました。あとは、学校に戻る以外にどんな選択肢があるかも具体的に伝えました。別の学校やフリースクールに行ってもいいし、家で勉強してもいいし、お仕事をしてもいい。お金はかかるけど、海外に住んでいる友人に頼んで海外に行くという選択もある。でも、必ず、学びは続けないとダメよと。たくさん道はあるけど、この先どうしたいかを選ぶのはあなたしかいないよって。
やっぱり親だから、子どものために何かしてあげたいと思う気持ちがあるし、特に小中学生の間は、「義務教育だし、なんとかして学ばせなきゃ」って思うよね。私のやり方が正しいかわからないけど、子どもも親も別の人間で、性格も人それぞれ。考え方だって違います。だから息子がどうしたいか、自分なりに答えを出すのを待ってみようと思いました。「これからどうする?」という話は日常的にしていたんですが、進路を決める時期になってきたころ、息子は、「高校に行きたい」と言い出したんです。
── ついに決めたんですね!そこからどうしたんですか。
ままるん:ちょうどそのころ、お姉ちゃんがひとり暮らしを始めることになりました。今まで家から仕事に通っていたんだけど、仕事が忙しくなってきたからって。このタイミングで、私も息子の環境を変えてみようと思い、思いきって引っ越しをすることにしました。元の中学に戻ることも別の中学に通うこともせず、これまで行かなかったぶんの勉強は塾でカバーして、高校受験をしました。高校では、まさかの皆勤賞ですよ。そのあと大学にも行きました。
弟の変化に感じた「いつでも人は変われる」
── 皆勤賞!中学時代とのギャップがすごいです。
ままるん:自分で「高校に行きたい」と言ったのを叶えたことが、息子のなかで成功体験になったようです。息子が学校に通えるようになって思ったのは「本来の姿に戻ったな」ということ。私も正直、息子が家にいた1年半はつらかったし、「どうしよう、何をしたらいいのかな」とすごく悩みましたが、家に引きこもっていても、こうやって人は変われるんだと思いましたね。
── 息子さんが家にいた1年半、どんなことを大事にしてきましたか。
ままるん:無理やり何かをさせるのではなく、息子を信じることに尽きると思います。うちは1年半でしたが、もしかしたらそれが10年続くかもしれないし、もっと長く続くかもしれない。でも、どんなことがあっても「いつも味方で、ママはあなたを信じてる」ってことは伝えていたと思います。それが愛ですよね。
娘からは大袈裟だって言われるんですが、私は子どもたちにも孫にも、わかりやすく愛情表現をしていると思います。私は若いときに海外でバッグパッカーで旅していたことをきっかけに、海外で仕事をして娘の子育てもしていました。今もひとりで海外に行くことが多いので、子どもたちに「ぎゅ~」っとハグするのが日常。でも、うちの子たちはハグがすごく下手なんですよ。
海外の友人も「ニコルのはまだハグじゃないわ。日本人っぽい恥じらいがあるわね」って(笑)。私がこんなに自由奔放だからかもしれませんが、子どもたちふたりはすごく真面目で静か。でも、昔から「お子さんいい子だね」と言われることが多いのは、親としては本当に誇らしいことです。
子どもとの関係は「愛」に尽きる
── 息子さんが不登校だった当時は悩んでいたとおっしゃっていましたが、振り返ってみて思うことはなんですか。
ままるん:もし子どもに何か悩みがあって、親はそれに対して「何もできない」と思っても、一緒に寄り添ってそばにいて、話を聞いてあげるだけでも違うと思うんですね。子どももこれからどうしたらいいかわからないし不安だけど、だんだんと道筋が見えてきたら、そのうちひとりであるいて、さらには走り出していっちゃうんですよ。そうなったら親は「いってらっしゃい」と見守るだけ。
息子からよく「普通のお母さんはこうだよ」って言われるんですけど、私に「普通」って言葉を使うとケンカになります(笑)。「普通って何?それはあなたが思う普通でしょ?人に押し付けちゃいけないよ」と言ってきました。
私はかっこいい母親ではないし、恥ずかしい姿や感情的な姿も見せてきたと思います。悲しいときや悔しいときは泣いて、嬉しいときは笑って。喜怒哀楽が激しい母親なんじゃないかな。
私はなんでも愛で片づけちゃうんだけど、子どもとの関係は愛があればいい方向に向かうと信じています。子どもたちにいろんなことを教えていると思っていたけど、実は子どもから学ばされていることも多いですね。
── 現在は、お子さんはふたりとも社会人になられて、娘さんと一緒にお店の経営をしているそうですね。
ままるん:はい。娘と一緒にパーソナルジムとペット用アパレルの経営をしています。娘がずっとトレーニングをしていたご縁でジムを始めて、ペット用アパレルは大切な家族である愛犬たちのために立ち上げました。経営しながらも常に新しいことを学び続けたくて、好きな放送作家さんの授業が受けられると聞き、50歳を過ぎてから1年間、お笑いの養成所に通いました。自分で何かイベントを企画するときに役に立つかなと。実習で、実技とか漫才やコントがあったんですけど、本当にネタを考えるのって難しいんですよ。
養成所で出会って、今も仲良くしているメンバーで勉強会を開いています。こういう世の中だから、生成AIやSNSの知識も増やしていきたいなと思って。インフルエンサーや銀行員、いろんな経験や人脈があるメンバーで、私はイベンターとして勉強会を企画しているんですけど、いくつになっても、学び続けるって楽しいです。でも私が「学びは楽しい」と思えたきっかけは子育てなんです。子育てに正解はないし、悩むことももちろんあるんだけど、それを通じて、一生学んでいたいという気持ちが芽生えたことは大きな財産です。
取材・文:内橋明日香 写真:ままるん

