さらばカメラのメニュー地獄――AIとスマホで劇的な進化へ【道越一郎のカットエッジ】
給与が一向に上がらない中、価格が2倍、3倍に上昇したとあっては、カメラは、一般消費者の手から、どんどん遠ざかっていく。確かに画質はよくなった。被写体認識の技術も格段に改善。「歩留まり」の向上も著しい。最新のカメラであれば、どれで撮ってもほぼ満足のいく写真が撮れるだろう。ところが、メニューの使い勝手は一向に改善されていない。こんなわかりにくいカメラならなおのこと、新規ユーザーの拡大は望み薄だ。冒頭に挙げたメニュー操作については、デジカメが登場した当時から、操作性の基本は全然変わっていない。どうにかならないものか。CP+2026の会場で、各メーカーのブースで不満をぶつけてみた。よく使う機能をショートカットボタンに設定すれば……との説明を受けたりもした。しかし、ちょっと待ってくれ。そもそもショートカットを設定するために、その機能を探すので一苦労なのだ。
OpenAIのChatGPTを筆頭に、GoogleのGemini、AnthropicのClaude、MicrosoftのCopilotと、生成AIは爆発的とも言えるスピードで普及が進んでいる。音声で普通に語り掛けると、多少の言い間違いがあっても意図を正確に受け止め、かなりの精度で的確に回答してくる。一方、カメラのAI活用と言えば、被写体検知やホワイトバランス調整など、ごく一部だけ。AI専用チップを搭載するカメラもソニーのα9IIIやα7RVぐらい。カメラまわりのAI化は激しく遅れている。AIをうまく使えば、温泉宿の迷路のようなメニュー体系から解放されるはずだ。カメラに直接AIを搭載するのは、さらなる価格上昇を招く。これ以上は勘弁願いたい。そこで、スマートフォン(スマホ)の活用だ。スマホ連携と言えば、ソニーのレンズスタイルカメラ「QXシリーズ」や、オリンパスのモジュール型カメラ「AIR A01」を思い出す。いずれも消えてしまった製品だが、AI活用時代の今こそ本格スマホ連携だ。劇的に使い勝手を向上させることができるのではないだろうか。
例えばこんな具合だ。まず、スマホとカメラを無線でつなぐ。スマホにカメラ設定の要望やこれから行う撮影シーンを声で伝える。スマホ側ではAIを活用し、まず音声認識から要望を分析。曖昧な部分は必要に応じてユーザーと音声でやり取りを行い解決。撮影者の意図をしっかり理解した上で、適切なカメラの設定要件を確定。最適な設定項目をカメラに送り、カメラの設定を完了させる……。あるいは、先に1枚撮影してスマホに画像を送り、状況をAIに判断させて、適切な設定情報をカメラにフィードバックし自動設定する……。今現在、こんなことができるカメラは1つも存在しない。今こそAIの出番だ。これで、絶望的に狭い画面にずらりと並んだメニュー項目からサヨナラできる。デジカメの黎明期からほとんど進化していないメニュー地獄から解放されるのだ。
何年か前、あるカメラメーカーの開発陣に「声でダイレクトにカメラの設定ができるような機能は考えられないか」と訊いてみたことがある。「一応検討はしてみる」といった回答だった。結局、その後何の音沙汰もなかった。当時、まだ音声認識の壁は高かった。しかし今ならその可能性は大いにあるだろう。設定を簡単にしたいと言うと「初心者向けのメニューがある」という返答が返ってきたこともあった。いやいや、そうじゃない。こちとら写真を撮って半世紀。逆に「夜景モード」とか「ポートレートモード」とかの方が恐ろしい。実際のカメラの設定が、具体的にどうなっているのかよくわからないからだ。シーンに応じてどうカメラを設定すればいいかは、わかっているつもりだ。ただ、メニューからそこにたどり着けないだけ。それをどうにかしてほしい。もちろん、撮影者が知らない項目であっても、適切な設定をカメラ側から提案してくれればなおいい。カメラは、そろそろ旧態依然のメニューから卒業してもいいんじゃないだろうか。(BCN・道越一郎)

