日本製ハイブリッド車が狙われる理由…静かな走行で窃盗団の足にも 部品は約30万円の高額取引 専門家解説 

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東京・足立区の住宅街に停められていた約320万円のプリウスが2人組の窃盗団にわずか3分で盗まれた。横行するハイブリッド車の盗難の狙いは何なのか。高額で取り引きされる部品の実態を自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんに聞いた。

ハイブリッド車は“窃盗団の足”にも

ーー日本車の盗難は増えている?
日本車は古いものでも新しいものでも世界的に人気があり、かつては80年代、90年代のスポーツカーがアメリカを中心に非常に人気があってよく盗難にあっていました。しかし最近はアメリカの輸入ルールが変わったことでかなり減り、それに引き換え増えているのが新しいハイブリッド車の盗難です。

ーーなぜハイブリッド車が多く盗まれる?
いくつか理由がありますが、1つはハイブリッド車は非常に静かな車なので夜に車を物色するのに都合が良く、“窃盗団の足”にされます。

2つ目は、ハイブリッド車は高価な金属を使った車です。マフラーに付いている排気ガスをきれいにする「触媒コンバーター」(有毒ガスを無害なガスに変換する装置)という装置は非常に高く取り引きされるため、盗んだ後いろいろな面でお金になります。

日本のハイブリッド車は世界中で人気があるため部品の需要も多く、触媒は高価な金属として1つ20万〜30万円の高額で取り引きされています。そのためアメリカやイギリスでは日本の比ではないほど多く盗まれていて、今は対策を施したのでやや減っていますが、触媒コンバーターを目的にした盗難が相次いでいます。

燃費や整備性の良さで人気

日本車は性能と整理性の良さから世界で人気が高く、盗まれたハイブリッド車はそのままの状態で輸出されるケースもあるが、パーツにばらして取り引きされることが多いと加藤さんは話す。

ーー分解されることが多い?
人気のハイブリッド車の場合は、車のまま(マル車)でも輸出できるし、部品にばらしても取り引きが成立します。

海外に“マル車”で輸出する場合は、「車体番号」という車の戸籍のような番号が必要です。盗難車の車体番号は“盗まれた車”として登録されているので、ほかの車の車体番号を貼り付けて密輸する必要があります。そのため、盗難車であることがバレないように部品にばらして出すケースは多いです。

ただ、多く売れている車種の場合は、車体番号の貼り付けもやりやすくなっているのが実状です。

ーーなぜ日本車は人気?
日本車は性能や燃費が良く、パーツの流通も整っているのでアフターフォローがしっかりしている点が魅力です。整理性も良いため、特別なトレーニングを受けていない人でもメンテナンスがしやすく、人気があります。

「ランドクルーザー」も被害増加

一方、ハイブリッド車以外にも、ランドクルーザーなど世界的人気を誇る日本車はターゲットになっているという。

ーーハイブリッド車以外も注意が必要?
トヨタのランドクルーザーは非常にリテールバリュー(小売価値)があり、中古車市場では新車よりも高い値段で取り引きされています。

最新型のランドクルーザー300や、2024年の春に発売されたランドクルーザー250もすでにアジアの国や本来は経済制裁で輸出が禁止されているロシアの中古車店で売られています。第三国経由でロシアに輸出されているか、もしくは、日本で盗難されたものが持ち出されている可能性があります。